2024年11月24日( 日 )

凋落する有力通販~悠香(2)

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(株)悠香

 茶成分配合の石けん「茶のしずく」のヒットで売上高300億円を超える有力通販企業に成長した(株)悠香。しかし、同製品を使用してアレルギー発症が多発したことにより、自主回収や集団訴訟に発展した。今年2月には、グループ企業の(株)Xenaが販売するビタミン含有石けんの表示が、景品表示法違反にあたるとして、措置命令を受けている。こうした状況から、業績に影響がおよんでいるが、急成長から急落となる九州の有力通販企業は珍しくない。これまでの同社の足跡を辿った。

「アナフィラキシーショック」で集団訴訟に発展

 「茶のしずく石鹸」で有力通販の仲間入りを果たした悠香。同社の関係者筋の話では、このころ、分社化による組織拡充を進めていくなかで、「茶のしずく石鹸」主体での通販から、新たな商品開発による準備をしていたという。通販業界では通説的なものとして、1商品では売上高400億円が限度といわれ、それ以上は成長が鈍くなり、減少していくケースが多いといわれる。新規顧客を取れず、従来からの顧客を維持するための広告出稿というかたちとなり、費用対効果が合わなくなる。当時の売上構成率は「茶のしずく石鹸」が約7割を占めていた。同社では天然素材の訴求から、シミ対策など、より機能性にこだわった商品開発の展開を考えていたといい、後述するグループ企業のXenaが、その機能性を強めた表示で行政処分を受けることとなる。

 そうした最中の09年、「茶のしずく石鹸」に含有される小麦加水分解物(加水分解コムギ末)により、小麦アレルギーを発症する事例が多発。皮膚科に駆け込む患者が増えているという話が広がり、厚生労働省は10年10月、加水分解コムギを使った石けん全般に対する注意喚起を通知。同社は11年5月、05年から10年に延べ約467万人に対して販売された「茶のしずく石鹸」約4,650万個について、自主回収を行い、現在は加水分解コムギ末を使用しない商品を改めて販売している。
 この騒動については当初、旧「茶のしずく石鹸」が厚生労働省の認可した医薬部外品であること、石けんと小麦アレルギーの因果関係がはっきりとしていなかったこと、当時、テレビ各局やメディアで大量に広告を出稿していたことから、報道に積極的ではないところが多かった。しかし、11年11月に朝日新聞が、厚生労働省の発表で、旧「茶のしずく石鹸」を使用してアレルギー症状を発症した患者は471人に達し、そのうち68人は救急搬送や入院が必要な重篤患者だったこと、消費者庁が国民生活センターからの報告を見落としていたことなどを報道。医薬品医療機器に関する法律による、報告義務(製品に有害作用の可能性を示す研究結果が判明した場合、30日以内に報告義務)の違反も取り沙汰された(同社は否定)。

 その後、同社のほか、旧「茶のしずく石鹸」を製造した化粧品受託製造の(株)フェニックス、小麦アレルギーを引き起こす原因の素材で、加水分解コムギ末「グルパール19S」を供給した(株)片山化学工業研究所の3社に対し、全国28の地方裁判所で原告1,300人以上、総額140億円以上を求める集団訴訟に発展する。同社は当初、請求棄却を求めて争う姿勢を見せ、「アレルギーは体質や遺伝の問題であり、すべての使用者が発症するわけではない」「小麦アレルギーはパンを食べて発症することがあるので、アレルギー源としてはパンも石けんと同様である」と述べ、商品の欠陥は認めなかった。しかし同社も早期解決に向け、和解を進めていくなかで、(株)片山化学工業研究所が応じないなど(後に請求棄却)、裁判は長期化。原告が多い東京などでは、いまだ決着がついていない。九州地域では熊本弁護団(原告は熊本、大分、鹿児島在住の20〜60代の男女33人)が1人当たり1,500万円、計4億9,500万円の損害賠償を求めた訴訟で、15年12月に同社とフェニックスが解決金として約5,000万円を支払うことで決着しており、一部は和解協議が進んでいるものの、全面的な決着まで、まだ時間がかかる模様だ。

(つづく)
【小山 仁】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:中山 慶一郎
所在地:福岡県大野城市御笠川5-11-17
設 立:2003年5月
資本金:3,000万円
業 種:化粧品の通信販売
売上高:(16/6)103億円

 
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