人事が語る「就職活動に異変?」(2)~働くための条件
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先日、地場の建設関連企業の代表者への取材時に、現在の就職活動について話題になった。その際に聞いた話だ。「ご存知のように、我が国の次世代を担う年齢層の人口比は減少している。有能な人材が育つ環境を整えるために努力、研鑽している企業の存在、世の中に役に立つような人間になろうとする若者がいるなか、驚くべきことを聞いた。旧知の学校法人の幹部が、“当法人での新卒の募集において、採用予定数3名の事務職に、何と300名の応募が来ました。午前9時~午後5時。土日祝日休み。盆正月休み。残業はほとんどなしという条件です。給与・賞与は、一般企業並みです”という。私は、今後の日本に危機感を抱いた。なぜなら、勤労意欲が激減していることが明白だから。その事務職も必要なポジションで否定するつもりはない。しかしながら、もっと自分の能力を発揮して世の中に貢献する意欲が欠落しているのではないか」と、若い世代の労働観についての強い疑念を持った様子だった。
近年の新卒求人倍率は、1.7倍前後で推移し、比較的“売り手市場”とされている。すなわち数字上では、“雇われる”側が優位な状況にある。上場企業の人事担当幹部によると、「歴史と伝統のある企業、安定度の高い企業。ブランド力の高い企業が、これまでにより増して人気度が上がっている。そして、コミュニケーションが親密で一体感が豊かな職場環境が求められている。それは、有能な人材が自分の同僚や上司としていることを望んでいる。そしてこれまでの経験(学業)がいかされて、成長できる企業を選びたいとしている。一方で、報酬は成果に関係なく安定した収入で、勤務時間や休暇、福利厚生などの待遇面の充実を給与より優先させる傾向が高まっている。特に休暇や勤務時間に対しては、敏感である」としている。このコメントから、新卒の就職予定者の傾向として、世間の認知度が高く、安定した企業への志向が高まっていること。そして人間関係が良好な職場環境を求めていること。これらは、過去も現在も変わりない就職予定者が求める条件の上位である。
一方で、給与・賞与、および報酬より勤務時間や休暇など待遇面を重視する傾向が高まっている。「感覚値であるが、学生側からの勤務時間や休暇に対する質問や問い合わせは、1.5~2倍に増加している。長時間勤務による過労死や心の健康を損なってしまう事例が、近年クローズアップされている影響はあるだろう。給料や仕事のやりがいに関連する条件も重要視しているが、それよりも勤務時間や体制、休暇の充実が求められている」(前出人事担当幹部)
冒頭に記した勤労意欲の激減に関しては、より精密な分析を待ちたい。しかし、近年の新卒の就活生の「働くための条件」が、自身への報酬や仕事のやりがいより、まずは安全・安心な労働環境を求めている傾向にあることは間違いないだろう。どの職種も大なり小なりリスクを有する。リスクがゼロという仕事は思い浮かばない。また、仕事にはアクシデントやトラブルは、付き物である。よって、決められた労働時間より、長い時間を費やして仕事を完遂しなければならないケースは発生する。一方で、働く人々は企業の道具ではない。生身の人間である。心身を害するまで過酷に労働を強いることはあってはならない。適正な勤務時間と休暇の設定と管理は、企業マネジメントの基本であろう。要するに労使間において、義務と権利を明確にしてグリップすることである。企業側が慣例や前例にとらわれずに、働き手が能力を発揮できる風土に進化していけば、仕事のやりがいや達成感を求める新卒の就活者がさらに増えてくる。
(つづく)
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