人事が語る「就職活動に異変?」(3)~『ある意味』優秀で堅実な人材
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2018年卒業予定者による就職活動が本格化して、まもなく1カ月が経過する。
記者は、その世代前後の人々と接する機会が多いのだが、総じて穏やかな性格の若者が増えたという印象がある。彼らに就職先・卒業後の進路をヒアリングすると、「上場企業」「業績が安定している企業」「働きやすい労働環境が整っている企業」「人間関係の調和がとれている企業」「あまり残業や時間外労働がなく、休日・休暇が確実に取れる企業」など、前回の記事でも触れたとおり、安定と安心を最優先した就職を希望している傾向が強い。「高い給料が欲しい。そのためなら、猛烈に働くことも覚悟している」「休日・休暇、福利厚生などの労働環境より、自分の実力が試される仕事をしたい」など仕事面を優先することを望んでいるのは、10人中1~2名程度である。「猛烈に働いて稼ぎたい」より「堅実に仕事を行い、人生を築きたい」というライフスタイルを望んでいる人々が増えていることを体感した。
ある上場企業の人事担当幹部は語る。「近年の新卒者は、自分のキャリアを高めて、難易度の高い仕事にチャレンジして、高い収入を得たいと考える割合は減少している。一方で、会社や社会に貢献する仕事を行っていきたいという志向の方々が増加している。自分のキャリアに対して興味がないというわけではないが、リスクを負ってまで自分の立身出世を求めることはない。それより、企業の一員として企業側が求める仕事を堅実に遂行し、成果をあげる。その仕事が、社会貢献に繋がることを望んでいる。要するに自己実現より、組織へのロイヤリティ(忠誠心)を優先させている。会社にそして社会に貢献することは尊いことであることが確かだ。『ある意味』優秀な人材が多くなってきている傾向にある。“ある意味”とは、堅実でかつ正確な仕事を行う資質が高いということである」。言い換えると、積極性があまり見られず、おおむね企業側が設定した仕事をキチンと行うだけ。それ以上の仕事への意欲は高くない人ばかり。「本音を述べると、元気がない、自らチャレンジするという姿勢が乏しいという印象だ」(前出人事担当幹部)
なぜ、近年の新卒の就活者は、自分の成長や報酬、出世などの自己実現より、組織の一員として極力リスクを回避する、堅実な社会人生活を望むのだろうか。それは、世間の目が多様化しているからであると考えられる。例えば、人と違ったことを行えば、SNSなどに発信されて好奇のネタにされる、非難の的として衆目に晒されて人格を否定される恐れがある。もしくは今より難易度の高い仕事に取り組むと、求められる成果を上げることができずに、叱責されることを恐れているなどが挙げられる。要するに“許さない、弾糾する”という風潮が、現代社会に蔓延しているのだ。だから、企業側が求めることを堅実に行い、チャレンジすることを志向しないという就活生が増えているという印象だ。
(つづく)
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