数々の奇跡が神社を復活させた!~熊本・瀬田神社
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昨年4月16日未明に発生した熊本地震により神社の本殿などの倒壊という被害を受けた熊本県大津町の瀬田神社。今月26日、鳥居と本殿などの復旧が完了し、地域住民により復活祭が行われた。復活祭には地区の30世帯の住民らが参加し、地区のシンボルの再生を喜んだ。
瀬田地区の区長を務め、神社復活の中心人物となった合志通夫(こうし・みちお)さんは、「瀬田神社の復活はこの地区の再生のシンボルとなる。大変感慨深いものがある」と語った。熊本県中北部にある大津町は、阿蘇山の周辺にあり、地震の被害を大きく受けた地区としても知られている。瀬田神社は4月14日夜の前震での被害はなかったものの、本震(4月16日未明)で神社横の岩石が削げ落ちて本殿を直撃し、押し潰された。倒壊後、余震が続いたことでしばらくは現地に立ち入りができなかったが、余震が収まった8月に地区の有志らで掃除を開始。瓦礫の撤去作業のために神社裏側に道を作り、重機を使って土地を再整備した。「本殿下のコンクリートは地区の住民らで手作業で固めました。(地域住民の)絆がより深まったと思います」(合志さん)。
今年1月に住民らで神社の棟上げを行い、3月10日にまずは本殿が復旧。そして20日に鳥居が完成した。本殿は旧本殿を倒壊させた岩の横に創建された。岩は「神の降臨」でもあり、地震があったことを風化させないためにも撤去せず、そのまま残された。
ご先祖様は神社のために積み立てをしていた
瀬田神社は室町時代の1570(永禄13)年に創建された由緒ある神社だ。約450年間、大切に守られてきたのには理由があり、この神社横から湧き出る水が地区の人たちの生活を支えているからだ。この恵みの水に感謝し、先祖代々、この神社を大切に守ってきたそうだ。予期せぬ大地震で町はメチャクチャになったが、資金の工面などのさまざまなハードルがあるなかで神社を再建できた背景には、数々の奇跡があったと合志さんは話す。
「まさか翌日に本震があるとは誰も予想してなかったですよね。前震の起きた日、区長の私は神社で後片付けをしていました。もし、後片付けの最中に本震が起きていたら、あの巨大な岩が落ちてきて、と思うとゾッとしますね」。
神社復活に向けては資金が必要だったが、地区の中には自宅が倒壊した人もいるため、寄付を募ることなどできなかった。そのような状況でも早期復旧に漕ぎ着けることができたのは、とある理由で資金的にメドが付いたため。「この地区に住んでた先祖たちは代々、瀬田神社に何かあった時のために少しずつお金を積み立てていました。だからこんなに早く再建にこぎつけることができました」。地震発生後、交付された助成金は道路、水道などの生活インフラや自宅の復旧に使用されているが、神社はよもやの積立金により再建できたというのだ。
「また、この神社を作り直してくれたのは宮崎の高千穂の大工さんなのですが、その大工さんはかつてこの瀬田地区で銘木屋を営んでいました。それも縁を感じますよね」。合志さんによると、いつかは高千穂の神楽を奉納したい考えがあるそうだ。
地震により大きなものを失ったが、新たに得たものも大きい。「瀬田神社を再建でき、この町の子どもたちが今後、郷土愛を感じられるようなシンボルとなれば嬉しいですね」。周辺の道路には亀裂が残り、川には瓦礫が山積み。完全復旧にはまだまだ時間を要するが、瀬田神社の再建が瀬田地区の復活の兆しとなり、励みになることを願いたい。
【矢野 寛之】
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