2024年12月23日( 月 )

久留米シティプラザの来場者数『水増し疑惑』を追う(前)

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 久留米シティプラザが開業からまもなく1年となる。久留米市長の言を借りれば1年間で60万人の動員、周辺施設を加えて100万人の動員を果たすという同施設。本来なら初年度より順調な動員を確保できて「おめでとう!」と言いたいところだろうが、実際はどうだろうか?

本当に60万人?!人通りがまばらな商店街

 総工費178億5,000万円をかけて、久留米市街の中心部に作られた巨大なコンベンション施設である久留米シティプラザ。賑わいを創出する施設として開業前は市民からも大きな期待が寄せられた。だが、開業1年を待たずして、同施設1階の飲食フロアに入っていた鉄板焼「六角庵」が昨年12月末で閉店。同店は久留米を代表する上場企業の梅の花が運営していた店舗だった。
 隣接するアーケード商店街にも人はまばら。福岡第三の都市であり、中核市の久留米市。“水と緑の人間都市”“水と緑の文化のまち”を標ぼうする都市だが、その久留米を代表する飲食企業の早々の撤退は衝撃的だった。

 この久留米シティプラザというのはどういう施設なのか? 3月のとある平日、昼間の同施設を訪れてみた。「ザ・グランドホール」(1,514席)のある施設に足を運ぶと木目調の開放感あふれる空間に驚く。とても静かで心地よく、まさに都会の喧騒から逃れ、“癒しの空間”に足を運んだ感覚を覚える。周囲の机や椅子にはお年寄りが集い、なごやかに談笑している光景もなんとも好ましい。人がまばらな昼間でも煌々と電気をつけ、空調は暖房をかけて“快適空間を演出”している。
 とはいえ、これらは久留米市民の血税が含まれた巨額の税金が投じられて作られた施設である。“癒しの空間”ではない、立派な公共施設だ。そう考えると、すべてが“贅沢の極み”に見えてこないだろうか。長年、ハコ物行政が問題視されるなか、移設反対運動が起きたほか3年前の久留米市長選の争点ともなった。だが、建設計画が走り出した後は、中心市街地を活性化させるための起爆剤となることを信じていた人たちも少なくはなかっただろう。

 そんな久留米シティプラザであるが、まもなく1年を迎えるにあたり、「がっかり」でなく、「やっぱり」という声があちこちから漏れ聞こえする。時間帯を変えて様子を見ても、明らかに周辺の人通りが増えている印象を受けない。
 近隣の商店街の人々の話を聞くと、次々に出てくるのは恨み節だ。「施設建設中は工事がうるさくて仕方がなかった」「商店街に恩恵はない」「税金のムダ。市民のためになっているのか」などと酷評する人ばかり。施設運営に手ごたえを感じると発表する市側との温度差が激しくある。
久留米市と商店街の温度差は、なぜ生まれたのか。久留米シティプラザを調査すると、驚くべき実態が見えてきた。

本来の動員数は29万人か?!

 久留米市によると、久留米シティプラザは2016年12月末で40万9,602人を動員したという。数字だけみれば物凄い動員数だ。参考までに福岡市が運営するコンベンション施設、福岡国際会議場の15年度の入場者数を調べたところ、45万1,660人だった。久留米シティプラザの数字は4月末から12月末までの約8カ月間の数字で、仮に12か月換算で動員予想を弾き出せば60万人の動員となる。これは市が掲げる目標の数字であり、行政側としては予定通り事が進んでおり、一安心といったところだろう。だが、その数字の内訳を見ると、おかしな部分が見え隠れしている。

 久留米シティプラザのメイン施設でもある多目的広場「六角堂広場」の来場者数は11万949人。これに隣接する休憩所ともいえるフリースペース「カタチの森」は11万6,718人だった。両方合わせて22万7,667人である。12か月換算ならば約34万人。この2つが施設全体の動員を牽引していることになる。しかし、イベントのない日は周辺の商店街も道路も人がまばら。どうやって集計したのか?という疑問を抱くのは当然だろう。そこで久留米市に質問すると、次のような答えが返ってきた。「六角堂広場の来場者数は主催者発表の数字の合計。カタチの森に関しては1階の業務委託を行っているカフェの運営会社の報告数字です」。市の施設である以上、公的な数字を出さなければならないはずだが、主催者発表、業務委託する運営会社の報告数字を動員数とするのはいかがなものか。

 六角堂広場はさまざまな所から自由に出入りできる。アーケード商店街から銀行が立ち並ぶ明治通りに行く場合は、六角堂広場を通るのが近道。多くの人の行き来があることが想定される。仮に六角堂広場のイベントで人が溢れ返っても、正確な来場者数を計測するのは困難だ。また、カタチの森にはカフェが併設されているが、ここに8カ月で11万人来ていることは、取材時の状況から考えても残念ながら想像がつかない。数字の算出方法に関しては、市には何の瑕疵もないのなのかもしれないが、「来場者数は本当の数字なのか」「水増ししているのではないだろうか?」と市民に疑念を抱かれているのが現状である。久留米市民にとって、この施設ができたことは本当にプラスといえるのか?

(つづく)

 
(後)

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