マーケティングの力で USJをV字回復させた立役者が去る!(前)
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国内2大テーマパークの明暗が分かれた。(株)オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)の2016年度の入場者数は前年度比0.6%減の3000万人で、2年連続の前年割れ。一方、(株)ユー・エス・ジェイが運営するユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市、以下、USJ)の入場者数は同5%増の1460万人で、3年連続で過去最高を更新した。USJが入場者数を増やしたのはマーケティングの力にあった。
マーケティングの鬼才をヘッドハンティング
USJのV字回復の立役者である運営会社ユー・エス・ジェイの森岡毅執行役員が2017年1月末に退任した。昨年12月16日に退任の記者会見を大阪市内で開いた。社長でもない、一社員が退任会見を開くのは極めて異例。多くの報道陣が詰めかけたという。日本最強のマーケター(マーケティング戦略の立案者)と評価されている人物だったからだ。
森岡氏は1972年10月12日生まれ。神戸大学経営学部卒。米日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の日本法人のヘアケア製品企画で腕を鳴らし、32歳でブランドマネージャーとして米国本社に登用された。2010年6月、P&Gを退社しUSJに入社した。
USJは01年3月、ユニバーサル映画のテーマパークとして開業。初年度は1,102万人の来場者があった。07年に東証マザーズに上場したが、直後のリーマン・ショクの世界的不況で、来場者は700万人に激減。09年、米投資銀行ゴールドマン・サックス(GS)が主導してMBO(経営者が参加する買収)を実施。USJの上場を廃止した。
大株主のGSとUSJのCEO(最高経営責任者)のグレン・ガンペル氏はUSJの再生には集客策が不可欠と考えた。そこでマーケティングのプロの森岡氏をヘッドハンティングした。森岡氏はUSJのマーケティングの責任者に就いた。入場者を倍増させた数学マーケティング力
森岡氏は入社直後からUSJの大改革を断行し、経営回復のための大戦略「三段ロケット構想」を掲げた。一段目はUSJの弱点だったファミリー層の獲得。二段目は関西依存の集客からの脱却。三段目は新パークをアジアへ多展開して、USJをエンターテイメント分野のアジアのリーディングカンパニーにするというもの。
森岡氏は一発屋ではない。ある施策を打った場合に、どれだけ入場者数が増えるかを確率的手法を活用してほぼ正確に予測するという。アイデアマンはあまたいるが、彼は数字がわかるマーケターなのだ。昨年、森岡氏は同僚の今西聖貴氏との共著『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』(角川書店)を出版し、今ではマーケティングの教科書となっている。テーマパークは入園料の値上げが入場者数の減少につながりやすい。森岡氏はUSJのチケット料金を大幅に値上げしながら集客数を倍増させた。就任当時と比較して、入場料金は5,800円から7,400円へ、年間パスも1万500円から2万2,800円へと大幅に値上げされた。にもかかわらず、集客数の大幅増を可能にしたのは、森岡氏の数学マーケティングの力といわれている。日本最強のマーケターと評価される所以だ。
【森村 和男】
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