2024年12月27日( 金 )

北朝鮮への先制攻撃はあるのか?(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 朝鮮半島を巡って緊張が高まっている。外国では韓国の4月危機説が流れているようだ。その理由は米国が北朝鮮を先制攻撃する可能性が取りざたされているからだ。トランプ大統領は北朝鮮の先制攻撃に踏み切るだろうか。

 米国はいつでも北朝鮮を攻撃できるように作戦計画を用意しているようだ。さらに最近アメリカ政府はオバマ政権の北朝鮮に対する柔和戦略は失敗だったとし、スタンスに変化が起きている。中国と日本、韓国を歴訪したティラーソン米国務長官は「戦略的忍耐の政策は終わった」と明言しており、今後の選択肢として武力行使も辞さないとしている。

 4月6、7日に米フロリダ州パームビーチにあるトランプ大統領の別荘で開かれた米中首脳会議で、トランプ大統領は北朝鮮問題の解決に中国が協力することを促した。その席で、「もし中国が北朝鮮問題を解決しないのなら、我々単独でもやる」とトランプ大統領は強い意志を示した。それに対して中国が今後どのような政策をとるのかが注目されているなかで、アメリカは中国の行動を促すため、北朝鮮にも軍事的な圧力をかけ始めている。

 シンガポールを寄港地としている原子力空母「カール・ビンソン」も朝鮮半島近海に移動しているし、米韓合同演習のために別の空母も韓国周辺に来ている。
 今回の米国の行動は北朝鮮に脅威を与えるためだけなのか、それとも噂のように北朝鮮の核施設を空爆するためなのかは誰もわからない。北朝鮮は米国のこのような動きに過敏な反応を見せている。北朝鮮は少しでも米国に先制攻撃の兆しがあるなら、先制攻撃をして米本土を焦土化すると脅している。

 この問題の発端はというと、北朝鮮の核脅威である。北朝鮮は核開発こそ体制維持の一番効率的な手段だと信じ込んでいる。北朝鮮の核開発は金正日(キム・ジョンイル)氏からスタートしている。しかし、金正恩(キム・ジョンウン)は国際社会の非難と制裁にも関わらず核実験を繰り返し、その脅威はエスカレートしている。北朝鮮は核を保有することによって、米国を平和交渉に引きずりだし、その後米軍を朝鮮半島から撤退させることで朝鮮半島を統一することを狙っている。北朝鮮の核開発は回を重ねるごとに核兵器の小型化の実現はもちろん、ミサイルの射程距離も伸びている。核兵器は核と運搬手段であるミサイルで構成されるが、両方とも北朝鮮は数年以内に米国本土まで届くような状況になっている。核の開発には膨大な費用が必要とされているが、北朝鮮は武器の輸出、外国でのレストラン事業、石炭の中国への輸出などから得られた収入で費用を捻出しているとされている。韓国はいうまでもなく、日本、それに米国東部を射程に入れるため実験を繰り返している。北朝鮮の核開発を諦めさせる計画は失敗に終わったので、実際に空爆をして核をなくすか、脅してこれ以上核開発が進まないようにするのが米国の狙いである。

 このような状況が生まれるようになったもう1つの背景は、韓国政府の態度の変化である。韓国は中国政府が北朝鮮の核開発をけん制してくれることを期待していた。しかし、ある時点で韓国は中国の姿勢に疑問を持つようになった。韓国と経済的に深い関係になった中国は、北朝鮮よりも韓国を大事にしてくれるだろうという期待が一時期あった。繰り返される北朝鮮の核実験に何の役割を果たしてくれない中国に失望した韓国は、アメリカと高高度防衛ミサイルであるTHAADの配備を協議することになる。サードミサイルの配備決定は韓国を挟んで米国と中国の利害が衝突するような様相を呈している。そのような要因も相まって今朝鮮半島の緊張は高まっている。米国からすれば、北朝鮮の存在は脅威の水位が度をすぎない限り、武器販売などの機会を提供してくれるので、むしろありがたい存在であるかもしれない。それから中国からすれば北朝鮮が崩壊して、中国が米軍と直接接することになることだけは避けたい気持ちであろう。中国は一方韓国との経済関係も大事で、それをふいにしたくないこともあるだろう。サード配備を巡って中韓関係もぎくしゃくしているなかで、中国人観光客は激減しているが、今月韓国の中国への輸出は7%ほど伸びている。韓国の半導体とか液晶パネルなしでは、中国の輸出は成り立たないからだ。

(つづく)

 
(後)

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