「郷土と地元を守る」崇高な理念で社会に貢献~一条工務店グループ(前)
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我が国の戸建て住宅業界でトップクラスの地位を誇り、沖縄を除く全国の営業拠点で事業を展開する一条工務店グループ。同グループの中核である(株)一条工務店は、創業の地の浜松市と静岡県に対して合計300億円の寄付を決め、2012年6月に県と浜松市と合意した。寄付の目的は、津波対策のための防潮堤の整備工事に対するものである。同グループの崇高な理念に基づいたアクションで、防潮堤整備の機運が一気に高まり、工事が進行している。そして何よりも、浜松市の政財界と市民が一体となり、『オール浜松』で防潮堤整備工事を支援している。
寄付活動から見える、純粋な郷土愛
(株)一条工務店は、1978年9月に静岡県浜松市で設立された。浜松市の道路を走ると同社の看板が頻繁に見られ、地元に根付いている企業であることがすぐに実感できる。設立以来、顧客に本当に喜んでいただける家づくりを追求し、「お客さまよりお客さまの家づくりに熱心であろう」という基本理念で、今日まで家づくりにまい進している。95年1月17日に発生した阪神大震災時に全半壊した住宅がゼロということを発表し、クローズアップされた。その後も、数多くの実証実験そして研究開発を重ね続けている。
12年6月に静岡県は、浜松市の浜名湖今切口から天竜川西岸の約17.5キロメートルに渡り、防潮堤の整備工事を行うことを発表。この『浜松市沿岸域防潮堤整備事業』の工事に際し、同社グループは合計300億円の寄付を行うことを表明。静岡県、浜松市、一条工務店グループの三者基本合意がなされ、12年度から3年間に分けて100億円ずつ寄付されることになった。防潮堤の工事は、14年4月に着工し、19年度内に竣工予定としている。
防潮堤の工事は同社グループからの寄付金300億円で完成させることが目標であったが、13年3月に当時浜松商工会議所会頭であった御室健一郎氏が会員の約13,500事業所に寄付を呼びかけた。「一条工務店さんの崇高な姿勢に対して、われわれも協力したい」とする同会議所の呼びかけに、同会議所会員の事業所を中心とした浜松市民、そして同会議所の会員ではない事業所からの寄付も多数届いた。その寄付活動とは、『1社1日100円運動』である。「コーヒー1缶が約100円です。そのコーヒー代金を防潮堤の整備工事のために浄財していただければという、当時の御室会頭のアイデアです」(浜松商工会議所関係者)。浅いながらも広く、そして長く寄付活動を行ってもらえるようにというアイデアであった。17年3月24日現在で12億1,439万円の申し込みがあり、活動は現在も継続中だ。同社グループの寄付金300億円と同会議所がリードする寄付金活動により、防潮堤は竣工される予定である。
同社グループが防潮堤の整備工事のために300億円を寄付したことで、浜松市の自治体、産業界、市民すべてが一丸となって防潮堤の整備事業を支える機運が高まった。まさしく1人ひとりの純粋な郷土愛、そして静岡・浜松への地元を愛する心の発露といえるだろう。この寄付活動において、その活動を前面にしてアピールしている事業所や人物は、皆無だ。それは、同社グループへの取材を依頼したときの姿勢にも表れている。「取材のオファーをいただきありがとうございます。心より感謝いたします。せっかくのオファーですが、社としましては寄付に関する取材は、すべてご遠慮させていただいております。PRや宣伝目的ではなく、“創業の地の浜松へ恩返しがしたい。津波の危険が高い浜松に防潮堤の整備をすることで、郷土に安心・安全がもたらされる”という創業者の大澄賢次郎の気持ちによるものです。そのような背景ですので、取材の件はご理解いただきますようお願い申し上げます」と、丁寧だが固辞する意思を告げる返答を電話でいただいた。5分間のやりとりであったが、大変謙虚な姿勢がにじむ会話であったことが印象的であった。この問題に対する謙虚な姿勢は、一条工務店だけではなく、商工会議所や浜松市内での取材時にも至るところで感じた。関わる人々は皆、自分の儲けや利益のためでなく、すべては純粋な郷土愛から来る寄付活動である。
防災意識の高い土地
住みやすい土地である浜松の地は、一方で過去には大きな地震が多発し、甚大な被害が発生してきた土地でもある。1498年に発生した明応地震は、マグニチュード(以下、M)8.6 に換算され、東海地方を震源とされる大地震であった。『遠江国風土記伝』には“湖水変為潮海矣”と記され、淡水湖であった浜名湖が津波により太平洋とつながり、今切と呼ばれる湾口を形成して湖が拡大したという。それが現在の浜名湖の今切口とされている。1707年10月に発生した宝永地震(M8.4~8.6)、1854年12月に発生した安政東海地震(M8.4)でも甚大な被害が記されている。
このように浜松は古来より地震による被害が多発する地域として認識され、市民の日常生活のなかでの防災意識も高く、今もその姿勢は続いている。「歴史が物語っているように、“いつ地震や津波に襲われてもおかしくない”と、浜松の市民は常に心にあります。浜松市内の小中学校を中心とした教育機関でも、日頃から防災の教育が頻繁に実施されております。幼少のころから、地震と津波の危険性について学び、そして防災訓練も日頃から行われております。とくに遠州灘に近い地域の皆さんは、意識が高いです」と複数の浜松市民が述べている。
(つづく)
【河原 清明】
<COMPANY INFORMATION>
(株)一条工務店
代 表:宮地 剛
本 社:東京都江東区木場5-10-10
浜松本社:静岡県浜松市西区大久保町1227-6
設 立:1978年9月
資本金:5億7,460万円
売上高:(16/3連結)3,533億円関連記事
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