2024年11月05日( 火 )

シェア高める杭打ち業界の二刀流、強みは工法問わない総合提案力(後)

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ジャパンパイル(株)(アジアパイルホールディングス(株))

金融機関出身の代表

 営業展開を有利に進めている要因として、コンクリートパイル協会会長も務める黒瀬晃代表の存在も浮かび上がってきた。同氏は三井住友銀行出身。2001年、ジオトップ時代に入社し、07年より同社代表に就任。業歴は15年以上だ。銀行主導で合併が進められたことによる入社経緯もあるだろうが、販路を広げようと思えば当然の選択だ。業界関係者は「民間は施主の力が強い。銀行からの働きかけがあれば、施主は応じやすい。ジャパンパイルの杭を採用してほしいという推薦状の存在もよく聞く話。昔も施主は強かったが、このような営業の仕方を知らなかった。施主や銀行の使い方だね。生命保険の営業と同じ。仕事したいなら、この保険に入って!と」。死角はないのか

 「ジャパンパイル内部に死角はそう見当たらない」。そう話すのは、同業者だ。「あるとしたら、既製杭では商社が絡むケースが多く、販売代理店絡みで危ない橋を渡っている可能性はある。いわゆるブローカーの存在。提案力があるだけに、カギを握るのは販売網の末端。販売代理店なら物売りに徹するべき。工事まで口を出すところもある。対照的なのは三谷セキサン。代理店を使わない方針を貫いて、あれだけ販売力があるのは、凄いの一言」。代理店は全国に広がっている。パートナーの働き次第では、吉とも凶ともなり得る。コンプライアンスを含めた、代理店への理念浸透が今後も重要になってくるだろう。

最近の工事経歴書を覗いてみると

 発注者はゼネコンか同業者で、すべて下請工事であった。全国に大小さまざまな代理店が存在し、大型物件から小規模まで案件もさまざま。裏を返せば、それだけ地方にも販売網を構築していることになる。ライバル三谷セキサンは、前述のように販売代理店を持たない。大型物件を狙ってゼネコンへの営業が中心だと聞く。「大型物件になると、コスト比較でジャパンパイルより三谷セキサンが強いケースが目立つ」と関係者。取りにいく物件は狙いを定めていく方針のようだ。同じ業界にあって、営業スタイルも千差万別。真似事で成長できる規模ではないということだ。

設計変更の壁

 取材過程でわかったことを追記する。杭打ち業者の営業先である。施主、ゼネコンに加え、設計事務所だという。設計段階で、「ぜひ弊社の認定工法でお願いしたい!」という営業らしい。設計段階で織り込まれた工法を後で変更するのは難しいからだ。つまり、最初に採用された工法で進むケースがほとんどのようだ。変更にはコストも時間もかかる。公共工事のような短納期では、設計変更はほとんどできないのが実情。そのため、設計段階で織り込まれる杭の工法で受注が決まる。ジャパンパイル保有の認定工法で織り込まれていたら、ジャパンパイルに基礎工事の話が来る流れだ。そのため、杭メーカーはこぞって設計事務所、とくに構造設計事務所へ足しげく通うという。

日本の技術で世界と戦う

 15年10月より、持株会社制へと組織が変わった。グループ名称は「アジアパイルホールディングス」。名前に込められたのは、アジア、世界展開へ視点だ。10年にベトナムのコンクリートパイル製造会社に対して出資し、資本提携を果たした。これを皮切りに、海外進出は進み、15年10月にミャンマーへ進出。現在、関係会社としてベトナムに9社、ミャンマーに1社存在する。「日本市場の縮小は目に見えている。すでに日本市場は競合他社とのパイの取り合い状態である。そんななか、海外志向が強いのはジャパンパイルだけだ」と関係者。技術開発への投資はもちろんのこと、市場開拓でも先手を打っている同社。二刀流を武器に、あっという間にシェアを奪っていった。業界リーダーとして、海外戦略が加速していくはずだが、同業大手もその姿を見つめているに違いない。

(了)
【東城 洋平】

<COMPANY INFORMATION>
アジアパイルホールディングス(株)
代 表:黒瀬 晃
所在地:東京都中央区日本橋浜町2-1-1
設 立:2015年10月(旧・ジャパンパイル(株)は2005年4月設立)
資本金:10億円
売上高:(16/3連結)720億7,800万円

 
(中)

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