2024年11月13日( 水 )

ニュースアプリ大戦争が始まった(前)

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 スマートフォンの普及に伴ってニュースアプリが乱立している。通勤電車の中で新聞や雑誌を読む人は激減し、60歳代以上がぽつりぽつりと読んでいる姿を見かける程度だ。20~30歳代をはじめ圧倒的多くの人がスマホで暇つぶしするのが般的になっている。ここにスマホのニュースアプリ台頭の下地がある。

 これまでニュースといえばヤフーのヤフートピックスが圧倒的な強さを誇っていたが、それはパソコン時代の話。パソコンをインターネットにつなげて最初に出るポータルサイトをヤフーに設定しておけば、ヤフーのヘッドラインに「トピックス」として13文字の見出しの記事が並び、ものによっては数百万の読者が読む。

 だが、スマホだとこうはいかない。いきなりヤフーに接続してヤフー画面が飛び出すということはないからだ。そこで台頭してきたのが各種のキュレーションサイト。そのなかで頭角を現したのが「スマートニュース」。天才プログラマーに認定された鈴木健氏が創業したため、ITエンジニア重視の経営姿勢をとり、とにかくスマホ画面のユーザーインターフェースが抜群によく、操作が簡単でデザイン性に優れているということでユーザーの支持を広く得た。新聞だと朝日、毎日、読売から始まって佐賀や大分合同、沖縄タイムスなど地方紙まで、さらには東洋経済オンラインやガジェット通信、ITメディアなど100を超える幅広いニュース、コンテンツを紹介している。広告モデルにより無料で読めるということもあって爆発的に普及した。

 同様に、「グノシー」も無料で読める広告モデルのニュースキュレーションアプリだ。他のニュースアプリよりもエンタメ色が強い点に特徴がある。2016年7月には1,400万ダウンロードを突破し、新興ニュースビジネスの中ではいち早く東証マザーズに上場した。スマートニュース同様に300の媒体からニュース、コンテンツを紹介するキュレーションアプリだが、全体的に芸能ネタや軽い話が多く、ビジネスパーソン離れが指摘されてきたため、よりニュース性を強めたニュースパスという新たなニュースアプリも始めている。

 スマートニュース、グノシーともに「自分たちで記事を書いたり記者を雇ったりしていません」(スマートニュース)、「各メディアから提供されている記事を配信しているだけで自社作成したニュースは配信していません」(グノシー)と言っており、フェイクニュースやパクリ記事を掲載したDeNAの「WELQ」などとは「全く異なるサービス」と主張している。

 両社とも既存の新聞社や出版社が自社コンテンツをネットに供給するようになって、いわば、供給先が多様に確保できるようになったこの数年に成立したビジネスと言えるだろう。新聞社はともかく、大手総合出版社は週刊誌や女性誌などのコンテンツをネットに供給することには「雑誌の売り上げが落ちる」(大手出版社の週刊誌編集長)とこれまでは非常に神経質で渋ってきたが、ネットの興隆に抗せず2012年以降続々ネット上に供給するようになった。こうして供給先が多様化したことによってスマートニュースやグノシーのビジネスモデルが成立したといえるのだ。いわばネット上にちりばめられた無数の情報源を引っ張ってくる技術が競争力の源泉。自分でコンテンツをつくったりニュース記事をつくったりしない点で、「他人のふんどしで相撲を取っている」面は否めない。

 この2社の台頭に対してヤフーは特集編集部を設け独自のニュースを開拓している。ノンフィクション作家の森健氏らに依頼し、ほかの媒体に未発表のオリジナルの書下ろしをアップするようにしているのだ。「かなりの高額の原稿料なのでワリのいい仕事」と執筆者の一人。ただし検索サイトから突然自前のニュースをやろうとしているせいか「社内の体制は脆弱。外部からの批判に対しては弱腰」ともいわれる。

(つづく)
【データ・マックス特別取材班】

 

(後)

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