2024年12月22日( 日 )

品質の信用失墜のキューサイ、新体制で巻き返しなるか(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 九州通販のパイオニア、またコカ・コーラボトラーズジャパン(株)のグループ企業として、青汁をはじめ、化粧品の通販事業で知られるキューサイ(株)。その子会社の日本サプリメント(株)での、特定保健用食品(トクホ)の許可取り消しや景品表示法違反を背景に、2017年2月16日付で現会長の藤野孝氏以外の全取締役が辞任した。前執行役員通販統括部担当兼通販統括部長の神戸聡氏が新社長に就任する新体制を敷いている。新体制で品質面を含めた信用回復となるかが注目される。

トクホ終売と発表も消費者庁、初の許可取り消し

特定保健用食品の許可取り消しについて
※クリックで拡大

 2017年2月16日、キューサイ(株)社内で激震が走った。前社長の藤野孝氏が代表権のない会長職となり、コカ・コーラウエスト(株)(現・コカ・コーラボトラーズジャパン(株))側から送り込まれていた柴田暢雄会長、若狭二郎副社長ら取締役全7人のうち6人が2月16日付で一斉に辞任。3月31日に角町誠氏が辞任し、藤野氏を除く全役員が辞任となった。新たに執行役員通販統括部担当兼通販統括部長の神戸聡氏が社長に就任、副社長には佐々木剛司氏が就任した。

 藤野会長を除く全役員が辞任した背景として、16年9月の日本サプリメント(株)による不祥事があるとみられている。トクホの『豆鼓エキスつぶタイプ』『食前茶』など6商品について、関与成分が含まれていない、または成分含有量が規格値を満たしていないことが発覚。消費者庁は健康増進法に基づき、トクホ史上初の許可取り消しとなった。さらに17年2月14日、「ペプチドシリーズ5商品」「豆鼓エキスシリーズ3商品」の表示が、景表法の優良誤認に当たるとして、措置命令を受けた。今回の人事はその処分によるものとみられる。

報告の遅れがアダに

キューサイ(株) 本社

 今回許可取り消しの対象となった商品の開発元は同社で、販売が日本サプリメント。豆鼓エキスについては、関係者によると、「もともと、豆鼓に着目したきっかけは豆鼓含有の調味料を食べている人は健康的な人が多いことがわかり、どのような有用性を持つのか、機能性素材として作用メカニズムの解明を含めて研究を進めた」という。中国にある企業で原料の大豆エキスを発酵化しているといい、原材料の大豆は「屑大豆」といわれるものを使用しているという。これは一般食品で使うレベルではないものの、精製には対応できる品質と話している。抽出・加工は国内で行っている。豆鼓は麹菌を付着させて72時間・40度で培養させることで活性させる。そのなかに含まれる活性成分の1つとしてトリスを発見。トクホ取得を目的に臨床試験を行ったところ、有意性が確認できたため、トクホとして申請したという。

 日本サプリメントは、トクホの許可取り消しが発表される前の9月17日付で、豆鼓エキス含有商品について、トクホ申請時に当時の分析技術によって関与成分をトリスと同定していたが、自主検査で現在の分析技術を用いて再検討したところ、トリスとは異なる成分であることが判明したと発表。かつお節オリゴペプチド含有商品についても、関与成分として記載していた「LKPNM」の含有量が規格値を満たさない疑いが出てきたことを理由に、トクホとしての販売を終了し、一般的な健康食品としての販売は継続すると発表。しかし、消費者庁は9月23日、日本サプリメントが終売すると発表したトクホ商品6件について、健康増進法に基づき、許可を取り消したと発表。トクホの許可取り消しは1991年の制度スタート以来、初の事例となった。

 「終売」と発表していたにもかかわらず、消費者庁が許可取り消しを発表したのはなぜか。2月14日の景表法に基づく措置命令について、消費者庁は「ペプチドシリーズ5商品の各商品については、遅くとも2011年8月以降、品質管理として、包装後の製品における関与成分についての試験検査が行われておらず、また14年9月に、関与成分の特定ができないことが判明しており、健康増進法第26条第1項の規定に基づく特定保健用食品の許可等の要件を満たしていないものであった」としている。日本サプリメントはその後も品質管理を怠り、販売を続けていたことを問題視されたとみられる。

 現行のトクホ制度は許可の更新制がなく、許可された後はほぼ野放しの状況にある制度であることが改めてクローズアップされた。その後、消費者庁は(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)を通じて、トクホ商品の関与成分に関する調査を開始。また、JHNFAは10月17日付で会員だった日本サプリメントを退会処分にしている。さらに、同庁はトクホの安全性や機能性で新たな科学的知見を入手した場合に、企業に消費者庁への報告を義務づけることとした。最近では大正製薬(株)などが販売するトクホ商品2品(申請者は(株)佐藤園)について、関与成分量が規格値を下回っていたことが発覚。一般紙でもトクホの特集記事が掲載されるなど、日本サプリメントの許可取り消しはトクホ業界に大きな波紋を広げるきっかけとなった。

(つづく)
【小山 仁】

<COMPANY INFORMATION>
キューサイ(株)
代 表:神戸 聡
所在地:福岡市中央区草香江1-7-16
設 立:1965年10月
資本金:3億4,900万円
売上高:(16/12)270億円

(後)

法人名

関連記事