2024年11月05日( 火 )

目視で数えて水増し?久留米シティプラザ来場者数「53万人」の怪(3)

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上峰サティが先制パンチ ゆめタウン出店で致命傷

 一番街商店街、六ツ門アーケード商店街などで構成される駅前商店街は駅前という一等地で出店時は高い賃料を支払い、集客という恩恵を受けてきた。だが、時代の流れとともに郊外型店舗に人が流れ、中心市街地が衰退する事例は全国どこにでもある。久留米市の場合、03年10月のゆめタウン久留米のオープン前からその兆候があった。1996年9月、近隣の佐賀県上峰町に上峰サティ(現・イオン上峰店)がオープン。九州初のシネコンである「ワーナー・マイカル・シネマズ上峰」の存在が、久留米の中心市街地に大きなダメージを与え、久留米の商店街にあった映画館は閉館した。

 かつて、久留米市の顔だったアーケード商店街は大いににぎわっていた。一時期は女優の田中麗奈さんの父親が経営することで知られるブティックなどの服飾店が数多くあり、映画館も何軒もあった。さらに人口密度換算では美容室の数が日本一と言われる時期もあったほどだ。ゆめタウン開業前、商店街に店舗を構えるとある店主は「(ゆめタウンが来ても)全然影響はないと思う。商店街のお客さんとの人間関係は強いものがある」と語っていた。一方で、ゆめタウン久留米に出店を行う店主もいた。彼は「いずれこの商店街は廃れる。私が商店街に出している店舗はいずれ閉店するつもりだ。でも今閉店してしまうと(他の店との足並みを乱すことになり)面倒だから」と語っていた。慢心がなければ商店街もここまで衰退せず、久留米シティプラザの誕生もなかったかもしれない。

楢原市長の出馬はある?!市政に物足りなさ

 久留米シティプラザだけでなく、残念ながら、市と商工会議所にはまちづくりにおいて明確なビジョンがない。本村会頭のほか、楢原利則市長も物足りない、と指摘する声も多い。現職の楢原市長は、7年前の選挙で初当選を果たし、2期目を目指した14年1月では約5万票を獲得したものの、久留米シティプラザの見直しをうたっていた宮原信孝氏に3万5,000票と迫られ、圧勝とまではいかなかった。

 通常、久留米市の現職市長は選挙の1年前には出馬表明を行うが、関係者によると今年3月に行われた市議会においても出馬表明は行われなかった。市長の周辺では元国会議員を担ぐ動きもあったが、この元国会議員は次の進路がすでに決まっていることから出馬要請を断ったという。久留米市政のトップを巡る動きも活発になってきた。市長と商工会議所の会頭が変われば久留米はもっと良くなるという声もある。長年言われてきているが、中心市街地が廃れ、東合川、上津などの郊外ばかりが活性化することはまちづくりの観点からもバランスが悪く、物足りなさを感じてしまう。

 まちづくりに詳しい元商業施設運営会社の社長によると、そもそも中心市街地を活性化させるためには、インバウンドのほか、商店街のマーケットをどう捉えるかがまず前提になければならないという。

 「インバウンドにターゲットを絞るなら、外国人観光客を集客できるネタとインフラを整備しなければなりません。これには大変労力がかかります。ですが、久留米市内に絞らず、佐賀筑後、福岡県内、九州、全国と、最初にどこの客を取り込もうとするか、ターゲットを明確にしなければいけない。ただ漫然と西鉄とJRの中間地点に大型コンベンション施設を建てても、生かすことなどできない」と語る。やはり5年の猶予があった合併特例債は延期して、もっと市民や専門家からの意見を集約したうえで建設すべきであったのではなかろうか。

 かつてJR久留米新駅の隣に久留米シティプラザを建設する案があった。JR久留米駅と西鉄久留米駅の間の商店街を活性化させるというプランで、当時まだ取り壊しがなされていなかった久留米井筒屋に市役所の一部を移転させ、市役所はホテルに改装するというものである。両駅の中央にある久留米井筒屋に市役所を移転させれば、市役所を訪れる人も含めて人通りは増えるという話だ。

 幻に終わったこのシティプラザ案も含め、これまでもどのようにすれば中心市街地を活性化できるか、市や商工会議所を中心に数多くの議論がなされてきた。専門的な知見や能力を持つ職員の登用もしくはプロと契約するといったことは当然のことながら、商店街を中心とした中心市街地の活性化を含め、市の経済を大局的にみることのできる司令塔として、適切な能力を持つ市長や商工会議所会頭の存在が何よりも必要であろう。

(つづく)
【矢野 寛之】

 
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