2024年11月27日( 水 )

仮想通貨ビットコインの急騰(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 20数年前の筆者の経験であるが、日本で両替をするために銀行に行ったときのことである。行員が伝票のような書類を持って、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていて、30分くらい待たされてイライラしたことがある。そんなに大きな金額でもなかったのに、あれだけの時間を待たされたのが不思議で、今でも記憶に残っている。
 しかし、これまで応対が早かった韓国の銀行でも、20数年前の日本の銀行で経験したようなことが日常になりつつある。

 韓国でも銀行で口座開設などをしようとするものなら、時間がかかるし、要求される書類も多くなった。その理由としては、マネーロンダリングの防止のためだという。そう言われると納得せざるを得なくなるが、それでも釈然しないのは私だけだろうか。

 俗に「銀行は、雨の日には傘を貸さず、傘の必要のない晴れた日には傘を貸そうとする」と言われている。だが庶民にとっては、銀行はますますハードルが高くなっている。銀行の基本的な役割は、お金を借りたい人と、お金が余っていて人にお金を貸したい人とを仲介することである。ところが考えてみれば、銀行は富む者の肩を持ち、ますます貧富の差を広げるのに加担しているような気がする。
 経済にとっては、資金という“血液”が円滑に回ることがとても大切なので、銀行という存在は肝心要である。しかし、その役割を十分果たしていないにもかかわらず、銀行はどこの街でも一等地に店舗を構え、行員も一番高い給料をもらっているのが実情である。
 最近の銀行はデジタル化が進んでおり、顧客の情報を厳重に管理し守るために、システム投資に巨額の金をかけている。しかし、それで銀行がもっと便利になったかというと、そうでもない。それに、海外送金などとなると、1件当たり数千円と手数料が高く、小額の送金は不可能に近いのが現実である。

 一方、銀行を監督する立場である政府はどうだろうか。政府は中央銀行を通して貨幣を発行させ、経済を成立させている。貨幣はもともと金(ゴールド)によってその価値が裏づけされていたが、米ニクソン大統領がドルと金の兌換を廃止することによって、今の貨幣は政府が保証しているだけで、本当の意味での保証はなくなっている。それは国民にとっては不安材料でもある。

 日本のような先進国では、自国の貨幣に対する信頼が厚いが、後進国では自国の貨幣に対する不安心理がある。
 それに、通貨発行が自由になった政府は、通貨の量を増やしたいという誘惑に駆られる。通貨量が増えれば、お金の価値は下がることになるし、物価は上昇することになる。しかしグローバル時代の到来で、通貨量を増やしても、すぐインフレにならないのが各国の状況でもある。お金の価値下落は相対的に、不動産などの価格の上昇をもたらし、ますます貧富の差を広げるような働きをする。
 それから各国政府は通貨量を増やして、自国のお金の価値を相対的に下げることによって、貿易で有利な立場になろうとする。このような通貨戦争が、今まさに起きている。

 時代がこのような状況に置かれているなかで、もう1つの大きな環境変化は何かというと、インターネット時代の到来である。インターネットは、お互いがどこにいるかは関係なく、時間と距離を越えてつながることができる。インターネットでの登場で、家にいながらしてショッピングができるので、ネットショッピングは大きく伸びているが、決済においてはインターネットの利便性をうまく活用できていないのが現実である。
 これまでネットで決済を行う際には、まったく知らない人と取引をすることがほとんどなので、銀行が仲介をして責任を取ってくれた。しかし銀行の介入は、高い手数料と複雑な手続きが必要になる。

 以上のような問題を解決する1つの方法として登場したのが、「ビットコイン(Bitcoin)」という仮想通貨である。

(つづく)

 
(後)

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