加計学園問題という「日本の美しき縁故主義」(3)
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SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦
この特区を巡っては「加計学園ありき」で進んでいたという批判がなされるが、競合する京都のプランを排除するために、「広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認める」という決定が去年の11月9日に行われたためである。この条件の追加により、近くの大阪に獣医学部が存在した京都は自動的に申請資格を失ってしまった。
このように事実上、加計学園しか応募できないような条件設定がされた末に、今年の1月10日に加計学園が獣医学部設置事業者に応募するに至ったわけだ。ここまでくると明確に加計学園を優遇する動きがあったと誰でも思うだろう。諮問会議が突如として他の申請者を排除する区域条件をつけて、より多くの事業者が参入するチャンスを奪った。これは、むしろ規制緩和に逆行する動きではないか。公明正大に京都産業大学と加計学園を競争させて、万が一、加計が落選してしまう可能性を恐れたのだろう。官邸側は「怪文書」扱いしているが、文科省の前川喜平前事務次官の登場で明らかになった「総理のご意向」文書も、恣意的に決定プロセスが歪められたことを裏付ける。
安倍首相は意思決定の不透明さを追及する野党側を抵抗勢力扱いするが、まさにこれが「印象操作」である。自らを「岩盤規制」をドリルで破壊する構造改革の騎手として位置づけ、その改革方針を批判する野党は抵抗勢力であると決めつける。小泉元首相がかつて郵政民営化のときに特定郵便局長会を抵抗勢力に位置づけたのと同じやり方だ。しかし、この獣医学部の問題では、実際は規制緩和に逆行する動きをしていた。
結局、安倍首相がやっていたことは、国家戦略特区という規制緩和の制度を悪用した縁故主義(利益誘導)の疑いが拭えない。週刊誌で報じられた内容だが、安倍首相はかつて、加計氏のことを「俺のビッグスポンサーなんだよ」と語っていたこともある。(「週刊文春」2017年4月27日号)安倍首相と加計氏がゴルフを一緒にプレーする映像が最近良く流れるようになった。本人もゴルフをする仲であることを認めている。そして、昭恵夫人は加計学園系列の幼稚園の名誉園長でもある。最近では国会審議の中で、2013年に安倍首相がミャンマーを訪問した際には、加計氏が政府専用機に同乗していた事実まで明らかになった。まさに「ズブズブ」あるいは「昵懇の関係」だったわけである。
加計学園は今治の獣医学部開学を来年18年4月に予定している。先に登場した悟氏は鹿児島大学を卒業したあとは、加計グループの倉敷芸術科学大学で獣医師の講師と副学長を兼任している。(「週刊現代」の記事)その倉敷芸術科学大学のサイトを見ると、同大の動物生命科学科で「小動物腫瘍のバイオマーカー開発」を研究として行っている事がわかる。
ところが、この加計氏の次男は、この大学の副学長を務めるかたわら、鹿児島大学と提携している山口大学の獣医薬理研究室で社会人大学院生として2016年4月現在、博士課程に所属していることもわかった。いずれ博士号を取得すれば、今治の新設される獣医学部でも教えることになるのだろう。そう考えると突然、話がわかりやすくなる。
つまり、この獣医学部新設に加計氏が異常な執念を燃やすのは、息子の研究をバックアップしたいという「親バカ」の思いも大きく関わっているのではないか、ということである。これはあまりにうがった見方だろうか?「獣医学部」が問題になっているのに、メディアはこの次男も含めてインタビューもしないのも不思議だ。獣医学部新設によって、もちろん全国の獣医師を目指す人は新たに学ぶ場を得るわけだが、一番の受益者になるのはもしかしたら、この次男ではないだろうか。
なお、フェイスブックの「加計悟」氏のページの500人以上の「友達」の中には安倍首相夫妻だけではなく、昭恵夫人の弟の松崎勲氏まで含まれている。これだけでどの程度の面識が互いにあるかは判断できないが、全く無関係とは言えないだろう。
(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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