2024年11月27日( 水 )

スマホ決済時代のクレジットカード(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 今は、世界のどこでもクレジットカードが使われるほど、クレジットカード自体は普及している。しかし今後、クレジットカード業界に大きな変化が訪れようとしている。

 まずは、スマートフォン(スマホ)の登場である。スマホが登場してから、さまざまな機能がスマホに吸収されたが、決済も例外ではない。中国では、むしろクレジットカードよりスマホの普及が進んでいる。そのため、初期導入にコストのかかるクレジットカードより、スマホ決済のほうが発達している。すなわち中国では他の国と違って、QRコードを読み取り、簡単に決済を済ませる「アリペイ」や「WeChat ペイ」などのスマホ決済がかなり普及している。それに、クレジットカードも持ち歩く必要のないように、スマホにクレジットカードを入れる試みがなされている。

 一方、スマホにクレジットカードを入れようとすると、クレジットカードの大事な情報が漏洩する恐れがあるため、セキュリティを厳重にしないといけない。

 ところが、アメリカのスクエアという会社では、逆の発想をするようになった。それは、スマホにクレジットカードを入れる代わりに、スマホをリーダーとして使おうという発想である。そうなると、今までのような端末機の導入なしでも、いつでも、どこでもスマホで決済ができ、ビジネスが拡大されることに気づいた。スクエアは日本にも上陸し、ビジネス展開をしている。スマホのイヤホンジャックにスクエアのリーダーを差し込むだけで、スマホは突然リーダーに変身を遂げる。

 クレジットカードはプラスチック製で裏面に磁気テープが張ってあるが、その情報が読み取られ、決済が行われる。しかし、スキミングの問題、不正利用の問題などを防ぐために、クレジットカードは磁気カードからICチップを搭載したものに進化しつつある。日本でも2020年をメドに、すべてのクレジットカードはIC化される予定である。

 ところが、そのような装置にも実は弱点がある。リーダーを差し込むイヤホンジャックが弱いため、接触不良を起こしたり、故障したりするようだ。

 韓国のNFCという会社では、そのような装置なしにスマホをリーダーにできるような技術を開発し、世界展開を目指している。たとえば、零細な店ではカードの端末機を導入したくても費用がかさむので、導入を控えている。しかし、スマホがリーダーになり、クレジットカードをくっつけるだけで、決済が行なわれればどうだろうか。韓国NFCの技術はクレジットカードからスマホへの決済だけでなく、スマホ同士の決済にも対応していて、とても便利である。
 また日本では、交通系カードであるSUICAは自動改札を通るだけでなく、電子マネーとしても活用されている。ところが、この技術はSUICAにも対応していて、スマホがリーダーに変身するので、まだ SUICAの端末機がないところでも、この技術さえあればどこでもSUICAが使えるようになる。

 このように、スマホの登場で決済市場が大きく変わろうとしているなかで、クレジットカード会社が市場を守るのか、それとも、アップルのような新しい勢力が台頭するのかはまだわからない。しかし、決済がますます便利になっていくのは、間違いなさそうだ。

(了)

 

(前)

関連記事