人工知能は世界をどのように変えていくのか?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
最近、人工知能という言葉を頻繁に耳にするようになった。人工知能は私たちが知らないうちに、段々と私たちの生活の一部になりつつある。
人工知能の始まりは、1950年代後半に人間にできることをコンピュータにも実現させ、「もっと便利な世の中をつくりたい」という人類の夢からスタートしている。その夢は簡単には実現できず、さまざまな壁にぶつかっていたが、最近、技術の新しいブレイクスルーにより、その実現はそこまで来ている。また現在、コンピュータはかつてないほど、早く、安く、強力な並列処理ができるようになり、先の人類の夢は現実味を帯びてきている。人工知能は、今までの教育やビジネス環境、そしてライフスタイルを大幅に変えるに違いない。今回はこの人工知能について、少し理解を深めるようにしたい。
コンピュータの登場によって、私たちの生活は大きく変化した。たとえば以前は、給与の計算をするのにいちいちそろばんを使って計算をしていたが、今はExcelが使われ、一瞬にして合計金額が求められる。図表を作成したり、文章を作成したりすることも、以前は手間のかかる仕事であったが、現在はコンピュータの登場で作業がずいぶんと楽になった。コンピュータは同じ動作の繰り返しや計算などの作業においては、人間よりずっと優れていて、まずこのような領域に活用された。
だが、コンピュータは今やその域を超えて、いろいろな領域へと活用の場を広げている。かつてコンピュータは「人間の指示することしかできない馬鹿である」と揶揄されていたが、いつの間にかコンピュータは人間の頭脳に代わるような判断力や推理力をも備えるようになってきた。人工知能とは、人間の脳のように、人間の言語が理解できたり、論理的に推論したり、経験から学べるようになったプログラムのことをいう。
人工知能を身近に感じるようになったのは、実は囲碁AIプログラム「AlphaGO」(アルファゴ)と人間の対決であった。囲碁は、人間がつくったゲームのなかでは一番複雑だとされており、コンピュータが囲碁でプロに勝ったことは人間には大きなショックだった。アルファゴは、囲碁専用の人工知能プログラムである。しかし、それは囲碁だけでなく、別の分野で回答を見つけたり、問題を解決したりするのにも応用が利く。グーグルはアルファゴを今後、医療や家庭ロボットとして活用していく計画である。
アルファゴのニュースが世界を駆けめぐることによって、世界は大きな衝撃に包まれたが、実は人工知能はその他の分野ですでに活用されている。
ある30代の男性が高熱にうなされて、米国ニューヨークの「メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター」に運ばれてきた。医者は男性の症状から、伝染性単核症、白血病、のどの腫瘍のなかのどれかに当たるだろうと思い、投薬。しかし、一向に効果が現れなかった。5日が経っても正確な原因と病名が特定できなかった医者は、患者を「ワトソン腫瘍内科」に移す。ここでは、人工知能の医者である「ワトソン(Watson)」が医者に代わって診察をする。ワトソンは患者の体温を測ったり、患部を調べたり、レントゲンを取ったりして検査し、その結果を総合し、病名を特定。検査だけでなく、数百編の論文も検索し、2時間後には病名を急性血管炎だと診断を下した。すなわちこのケースでは人間より、人工知能のワトソンの診断能力が勝ったのだ。
投資の世界でも、同じようなことが起きている。ヘッジファンドの世界で、ファンドマネージャーより人工知能がもっと高い収益率を上げている。ファンドマネージャーの平均収益率は3%であるのに対して、人工知能は5%の収益率を上げている。コンピュータは感情に流されることなく、複雑な状況を冷静に分析できるので、当たり前といえば当たり前の結果である。その結果、投資世界では「ロボアドバイザー」といって、人工知能の採用が増えている。
(つづく)
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