2024年11月13日( 水 )

「ロシア・ゲート疑惑」を8割がた乗り切ったトランプ大統領(3)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

SNSI・副島国家戦略研究所 中田 安彦

 そのような「ゆるいつながり」をもとに、アメリカの主要メディアはトランプとロシアの「癒着」を印象操作で報道している。そのような報道が行われる背景には、米国は「覇権国であるがゆえに、他国からの介入をものすごく恐れている」という深層心理がある。冷戦時代に「マンチュリアン・キャンディデット」(邦題は「影なき狙撃者」。デンゼル・ワシントン主演によってリメイクもされた)という映画が作られた。朝鮮戦争からの帰還兵が共産中国に洗脳されており、無意識下で殺人を重ね、大統領候補まで標的にするという共産主義への恐怖を煽る映画だ。その後、「(アカに)洗脳された政治家」を「マンチュリアン・キャンディデット」と呼ぶようになったということは大統領選挙の時にこの連載でも書いたので覚えている人もいるかもしれない。しかし、今のところわかっている範囲ではトランプはかつてロシアでのビジネスをやろうとした経験があるが、直接的に「洗脳」もされていないし、癒着があるという証拠も上がっていない。

 また、ロシアとの癒着問題では、大統領選挙で当選した次期大統領やその関係者はまだ民間人なので、勝手に外国政府と政府の立場を無視して外交交渉をしてはならない、という法律に違反している、という指摘がある。これは「ローガン法」という法律で、1799年に制定されたものだ。しかし、過去の政権の関係者を詳しく調べれば、密かに次期政権の当局者が外国の政府関係者と面会することは普通にあったはずだ。ビルダーバーグ会議やダボス会議のような国際会議にはアメリカ政府高官も出席しているし、民間人も出席して外交について議論しているが、この出席がローガン法違反になったことはない。そもそも、制定以来、ローガン法では訴追された人は一人もいない。だから、何度かロシア側の関係者にトランプ次期政権の関係者が会っていたからといって、何か国家反逆罪に相当する違法行為があるという証拠でもあれば別だが、この「法律違反」で追及することは「政治的なパフォーマンス」以上の意味はないのだ。

(つづく)

<プロフィール>
nakata中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

 
(2)
(4)

関連キーワード

関連記事