2024年11月05日( 火 )

全国の鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造建築物に潜む、構造計算の偽装(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 福岡の構造設計一級建築士・仲盛昭二氏は、過去に代表を務めていた構造設計事務所サムシングが関わった設計において、「建築士として不誠実な行為」があったとして、一級建築士免許取消処分を受けた。仲盛氏が、国に処分の撤回を求めた訴訟は、現在、福岡高裁で控訴審が審理中である。この裁判で処分の対象となった14物件に関して国側が処分の根拠として提出した構造計算書(再現計算書・推測計算書)において、柱・梁接合部の検討が省略されており、接合部の安全性が確認できない不正な計算書であることが、仲盛氏の検証により判明した。しかも、これら14物件について、管轄の行政庁(福岡県、福岡市、佐賀県)から安全証明が発行されていたのである。柱・梁接合部という構造上重要な部分の検討を省略しておきながら行政庁が安全証明を発行したことは、はたして、「構造上の安全を確認済み」と言えるのであろうか。国が、不正な構造計算書を裁判所に提出したという、耳を疑うような事件について、仲盛昭二氏に話を聞いた。

 ――仲盛さんの一級建築士免許処分の対象となった14物件に関して、国が裁判所に提出した構造計算書が、鉄筋コンクリート造(RC造)の柱・梁接合部(仕口)の検討が意図的に省略されていた不正な計算書であったということについて、詳しく教えてください。

仲盛 昭二 氏

 仲盛昭二氏(以下、仲盛) 専門的な話になりますが、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物は、柱と梁が交差する部分(接合部または仕口という)に、柱の鉄筋と梁の鉄筋が集中し、十分な鉄筋間隔が確保できず、コンクリートを打設する際も、充填が不十分となり、地震の際にひび割れが発生しやすく、この部分の構造耐力が大幅に低下し、建物全体の崩壊につながります。
 柱・梁接合部の安全性を確保しようとすれば、梁の幅を大きく(広く)しなければなりません。そうすれば、建築コストに跳ね返ります。
 平成19(2007)年の法改正以前は、建築確認において、接合部の検討に関して指摘されることがなかったので、私も含めて、多くの構造技術者が、接合部の検討を意図的に省略していたという現実があります。接合部の検討は、平成19年の法改正よりはるか前から、「鉄筋コンクリート構造計算規準」(日本建築学会)に規定されている重要な検討項目であり、接合部の安全を確認するのは当然のことでした。しかし、建築確認審査で指摘を受けることがないため、ほとんどの構造技術者が、「意図的な検討の省略は不正な設計」という認識があったかどうかは別として、結果的に、柱・梁接合部の検討を行っていなかったというのが実態です。

 ――鉄筋コンクリート造(RC造)の柱・梁接合部(仕口)の検討省略という不正な設計の実態は、どのような経緯でわかったのですか?

 仲盛 私の一級建築士免許処分の対象となった物件が14件あります。これらの物件について、国側で作成された「再現計算書」「推測計算書」において、「柱・梁接合部(仕口)の検討が不正に省略されていることがわかったからです。建築確認当時の構造計算書で、接合部の検討が行われていなかった(プログラムに検討機能がなかった時期もある)ため、国側作成の再現計算書、推測計算書では、接合部の検討を不正に省略したようですが、各行政庁は、接合部の安全を確認しない、不正な状態のまま、各物件の「安全証明書」を発行しており、国も追認しているのです。設計者だけでなく、国をはじめとした行政までも、柱・梁接合部の検討の省略という不正な設計に加担していると言えます。この接合部の検討の意図的な省略という不正な設計が全国的に表面化すれば、国としても収拾がつかなくなるため、国自らが作成した再現計算書や推測計算書では、重要な接合部について触れなかったのだと思われます。

(つづく)
【文・構成:山下 康太】

 
(2)

関連記事