全国の鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造建築物に潜む、構造計算の偽装(3)
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――鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物に関して、他に問題点はありますか?
仲盛 建設省(当時、現・国交省)も含め、監修の建築物の構造規定や技術基準解説書など建築確認審査の際の判断規準において、「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の1階鉄骨柱の柱脚がピン柱脚である場合、柱脚の鉄量(鉄筋(主筋)とアンカーボルトの断面積の合計)が、柱頭の鉄量(鉄骨と鉄筋(主筋)の断面積の合計)と同等以上でなければならない」と規定しています。工学的な見地からも当然の規定です。
この規定の目的を簡単に説明すると、最も力の掛かる1階の足元を剛強にし、地震の際の建物の倒壊を防止するということです。しかし、久留米の新生マンション花畑西を含め、ほとんどのSRC造のマンションなどでは、ピン柱脚でありながら、柱脚の鉄量が少なく、柱頭の鉄量の半分程度という例が多く見受けられます。久留米の新生マンション花畑西の柱脚の鉄量は、柱頭の鉄量の48%しかありませんでした。――指摘されたような構造計算の不正は、現在は、行われていないと思いますが、いかがでしょうか?
仲盛 建築確認が民間に開放され、その後、平成19年の建築関係法規の改正により、建築確認の運用が厳しくなりました。しかし、残念ながら、私が指摘したような不正な構造計算は一部に残っており、いまだに、確認機関から指摘を受けることもなく、建築確認を通過した事例も見受けられます。平成19年以降の民間の確認機関による建築確認では厳しく審査が行われているようですが、公共建築物においては、行政同士による審査が緩いため、不正な構造計算が見逃されたことが多いようです。その代表的な物件が、東京豊洲新市場の水産仲卸売場棟です。
この建物は、日本最大手の設計事務所である日建設計により設計されましたが、構造計算において、「ピン柱脚の鉄量の不足」「保有水平耐力計算のDs値の不適切な低減」が平然と行われており、耐震強度も、東京都の条例を大きく下回っていました。私は、この事実を、小池百合子東京都知事、日建設計の亀井社長、東京都議会議員、市場関係団体、日本共産党志位委員長などに知らせ、警鐘を鳴らしました。しかし、東京都も都議会も日建設計も黙殺しています。東京都や関係者にとっては、「不正な構造計算=耐震強度不足」など、絶対に認めることのできない秘密なのだと思います。――鉄筋コンクリート造(RC造)の柱・梁接合部の不正な設計や、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の柱脚に関する係数の不適切な低減は、実際のところ、どの程度の割合で行われていたのでしょうか?また、行われていた場合、建物の耐震強度にはどれほどの影響があるのでしょうか?
仲盛 鉄筋コンクリート造(RC造)の柱・梁接合部の検討が意図的に省略された不正な設計の物件は、これまでの調査から全体の80%程度におよぶと考えています。また、これにより実際の耐震強度は20~30%程度低下しています。
一方、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の柱脚に関する係数の不適切な低減は、全体の90%程度の割合で行われていると思います。これにより実際の耐震強度は30~50%程度低下しています。(つづく)
【文・構成:山下 康太】関連キーワード
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