2024年12月27日( 金 )

北朝鮮の無人機墜落(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 それでは、ドローン世界市場規模は現在どのようなものなのか。14年の世界市場規模は53億ドルで、23年には125億ドルに成長することが予測されている。現在ドローン市場のシェアの60%はアメリカが占めていて、その後ろを中国が追っかけている。韓国は世界7位にランクされているが、技術格差はかなりあるようだ。しかし、韓国にも世界をリードするような技術を開発するために努力をしている。その中の一つがソウル大学教授の卓勝鎬(タク・スンホ)氏が開発した低騒音のドローンである。すでに、国際標準に採用されるなど、一定の評価を得ている。もう一つはティルトローターの技術である。ティルトローターとは、ローター(プロペラ)部分が90度向きを変えられるようになっていて、離着陸する際にはヘリコプターのように垂直に離着陸し、飛行時には普通の飛行機のようにプロベラの方向を水平にして飛行する技術である。

 今まではドローンの可能性を見てきたが、ドローンには課題も山積している。
 ドローンが武器として活用される場合、大きな被害をもたらす恐れがある。またテロなどの各種犯罪に悪用される可能性も排除できない。実際これからの戦争はドローンを活用した戦争になると言われている。上記の北朝鮮の無人機は、今回こそ偵察の目的であったが、それが攻撃的なものであった場合を想像すると背筋が寒くなる。また、ドローンは写真及び動画の撮影が可能なので、プライバシーの侵害も懸念されている。このような背景から各国ではドローンに対する規制を強化している。
 ドローンの大きな問題の一つは、墜落などの安全性の問題である。無線によって操作されるドローンは、無線が混線すると衝突のおそれもあるし、強風にあおられて墜落する可能性も高い。ドローンはかなりの重量があるだけでなく、高いところからの墜落なので致命的な人的な被害、物理的な被害の発生が予想される。
 これをどのように防ぐかは、これからの課題である。

 最後に、ドローンには技術的な限界もある。空を飛ぶためにはどうしてもバッテリーが必要になるが、長時間飛行を妨げる障壁もまたバッテリーである。バッテリー容量を増やせば、サイズが大きくなって消費電力が大きくなるため、安易にバッテリーを大きくすることもできない悩みがある。その他に、建物などへの衝突を回避できる技術、自動操縦技術などいろいろな技術が要求されている。ドローンは大きな可能性と課題の間で、市場の拡大を模索している。今は1万円前後で購入できるおもちゃのようなドローンから攻撃用の数億円もする高度なドローンまでもが登場している。新しいものが出現する時はいつも起こることだが、技術の発達に法整備が追いついていないのも現状である。
 しかし、ドローンが一つの大きな産業として育つと見て、各国はこの分野の人材育成などに力を入れている。航空だけでなく、IT技術などいろいろな分野の技術が求められるだけに、ドローンは新産業として大きな可能性を秘めているのは間違いない。

(了)

 
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