全国の鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造建築物に潜む、構造計算の偽装(4)
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――仲盛さんが代表を務めておられたサムシングが構造設計を行った物件も、RC造の柱・梁接合部やSRC造の柱脚に関して、不適切な設計があったのでしょうか?
仲盛 サムシングの物件に関しては、構造計算書の不整合が「不誠実行為」として、私の一級建築士に対して処分が行われました。現在の私は、「一般的な一級建築士ではないが、構造のエキスパートである構造設計一級建築士ではある」という珍しい状態になっています(編集部註:仲盛氏の免許処分の対象物件の設計は平成12年~13年頃であり、構造設計一級建築士の資格が創設される以前であったためと思われる)。
現在、私は、サムシングが構造設計に関係した物件のデータの復旧に取り組んでおり、ある程度まで復旧に成功し、さらに作業を進めています。これらの物件を調査したところ、残念ながら、RC造、SRC造とも、かなりの物件において、先に述べた問題が見受けられました。これらの物件の設計当時、私は、RC造の接合部の検討やSRC造のピン柱脚の鉄量やDs値について、技術的には認識していましたが、実際のところ個々の社員がどこまで認識していたかはわかりません。しかし、私が検証をし、事実を知った以上、すべて、経営者であった私の不徳の致すところであり、国や日建設計のように隠蔽することはできません。
――サムシング以外の構造設計事務所も同じ認識で、構造計算を行っていたのでしょうか?
仲盛 他の構造設計事務所の物件も調査を進めていますが、現在までに調査した物件すべてにおいて、これまで指摘した不正な設計が確認されました。
――なぜ、自らの身に降りかかる可能性があるのに、サムシングの物件にまで言及されるのですか?
仲盛 先に述べたように、サムシング関係物件においても、RC造の接合部やSRC造の柱脚に問題があったことが確認され、その会社の代表であった私が言うべきではないことは、重々承知しています。しかし、国は、ごく近い将来に発生するであろう大地震を想定して、国土強靭化計画を推進しています。構造技術者と行政、ひいては建築主の怠慢により、不正な構造計算により構造耐力が不足した建物が、全国に建設されており、大地震が発生した場合、甚大な被害が生じる恐れがあるという実態を看過することはできません。
先日、ロンドンのタワーマンションで大火災が発生し、大きな被害が出ています。この建物は、以前から、防災上の問題が指摘され、改善を訴える声が上がっていましたが、改善することなく放置したため、甚大な被害となっています。不正な構造計算の問題も同じことです。行政や建築関係者に対して、注意喚起し、対応を迫る行動を起こし、その記録を残しておくことが重要だと考えます。行政が、巧妙な手段で逃げることは、最近の国会の動きを見ていれば、よくわかります。このようなことを踏まえて、私は、今回の告発を決意しました。
建築業界や国を挙げて隠蔽するよりも、国民の安全を確保することを優先し、全国の建物を緊急調査し、安全を確保する対策を講じるべきであると考えています。
良くも悪くも、光があれば必ず影があり、光が強いほど、影も濃くなります。私が指摘した、RC造の接合部やSRC造の柱脚に関する不適切な設計は、いわば、建築行政の影の部分です。平成19年以前の建築確認行政がずさんであったため、姉歯事件をはじめ、多くの影を生み出しました。そして、平成19年の建築関係法規の改正により建築確認制度の運用を厳しくしたことにより、過去の建築確認行政の影の部分が、さらに大きく浮かび上がってきたのです。国をはじめとした行政側は、この影を認めれば、収拾のつかない事態が予想されるため、影を消したいと思っていることは間違いありません。しかし、国は、国土強靭化計画を推進しており、過去の建築行政の影を解消しなければ、矛盾を抱え込むことになるのです。私は、一級建築士免許を取り消され、建築に対する意欲も失せたので、建築界から身を引く覚悟をしていますので、私に残された最後の使命として、勇気を持って、この事実を告発することを決意しました。全国の設計関係者も、国をはじめとする行政も、国土強靭化計画に沿い、国民の安全と資産を守るために、英断を下していただきたいと思います。
(つづく)
【文・構成:山下 康太】関連記事
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