幸福の国コスタリカ その現状と課題とは?(中)
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日本の技術が再生可能エネルギーに貢献
――日本とコスタリカの関係は、どのようなものでしょうか。
大谷 コスタリカでは、国際協力機構(JICA)が積極的に活動されていました。
関根 JICAは、大きなものだと地熱発電所の開発支援、円借款で資金援助をしつつ、日本企業のコンサルティング、ゴミの分別の指導など。サンホセ市内で下水道と下水処理設備の整備も行っていましたね。青年海外協力隊員も毎年数十名コスタリカを訪れていて、それぞれ地方で環境や教育の指導を行っています。
――さまざまな支援を行っているんですね。
大谷 水力発電が全体の4分の3ぐらい、残りは地熱や風力など、再生可能エネルギーだけでコスタリカは電力をほぼ100%賄っています。
関根 予期せぬ天候など、緊急時だけ化石燃料を使って火力発電を行うそうです。太陽光はあまり進んでいませんでした。
大谷 再生可能エネルギーだけで賄えている理由は、山や川に恵まれ、火山が多いからだそうです。コスタリカは日本の技術で再生可能エネルギーをこれだけ活用しているのに、技術や資金を提供している日本本国は原発を推進している。もっと日本の国内でこの技術を生かせないものかと、何か悔しい気がしますね。コスタリカの自然保護区ないにある地熱発電所を訪れたら、日本人というだけで感謝されて、なかを案内してくれましたよ。
関根 地熱発電タービンの世界シェアの7割ぐらいが日本製です。世界を見て回ると日本の技術が使われている現場が多いですね。
コスタリカでは1950年代から地熱エネルギーの開発が行われているのですが、これは誰かがリーダーシップをとったのではなく、コスタリカ人として「自然を傷つけないエネルギーを活用しよう」ということで始まったそうです。コスタリカ電力公社の方は「自然を愛することは哲学」だとおっしゃっていましたね。コスタリカが掲げる大きなビジョン
関根 コスタリカという国は、未来志向のビジョンを描くことに長けていて、そこに向かっていく姿勢については、非常にすばらしいですね。国として初めて「カーボンニュートラル国家」(※2)を目指すと宣言するなど、現在は環境立国を目指すという大きなビジョンを持っています。
たとえば、現代コスタリカをつくり上げた、コスタリカ人のなかで父親のように尊敬されているホセ・フィゲーレス・フェレール元大統領という方がいまして、大統領任期中の1949年に憲法で軍隊(常備軍)を持たないということを決めました。そして、それが現在まで徹底されている。
コスタリカで、さまざまな人に「他の国からの侵攻は怖くないのか」「将来にわたって軍隊を持たなくていいのか」と聞いてみましたが、政治家や先生、近所のおばちゃん、子どもに至るまで「絶対にいらない」「国際法で守ってもらう」と答えます。「米州相互援助条約」(※3)という集団的安全保障体制があって、コスタリカが攻撃されるとアメリカや周囲の国が助けてくれるようになっています。
大きなビジョンをフェレール大統領が掲げて、実際に実行した姿を国民は見てきたんですね。しかも、ゼロになった軍事予算をすべて社会保障に回した。現在はGDPの8%を教育に充てることを憲法で決めている。国民皆保険制度も実現している。
「軍隊を持たない平和な社会」を目指すうえで、「何を行うべきか」という選択と集中ができたんですね。生きやすい国を追求した結果が、世界的な調査でコスタリカが「世界で一番幸福」になった理由だと思います。(つづく)
【文・構成:犬童 範亮】※2 カーボンニュートラル:排出される二酸化炭素を自然エネルギーの導入などによって相殺すること。コスタリカは将来的に「排出するすべての二酸化炭素を相殺する」国となることを宣言している。
※3 米州相互援助条約:リオデジャネイロで1947年9月2日に署名され、1948年3月12日に発効した、北米・中米・南米諸国間の防衛に関する相互支援条約。
■コスタリカ共和国
面積:51,100km2(九州と四国を合わせた面積)
人口:481万人(2015年時点)
首都:サンホセ
言語:スペイン語
民族:スペイン系および先住民との混血95%、アフリカ系3%、先住民他2%<プロフィール>
大谷 賢二(おおたに・けんじ)
1951年、福岡市生まれ。九州大学法学部卒。98年5月、NGOカンボジア地雷撤去キャンペーン結成。2008年12月、アジア人権基金より「アジア人権賞」を日本人として初受賞。11年4月、(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーンを設立、理事長に就任。<プロフィール>
関根 健次(せきね・けんじ)
1976年生まれ。ベロイト大学経済学部卒業。2002年にユナイテッドピープル(株)を創業し、世界の課題解決を目指す事業を開始。03年、募金サイト「イーココロ!」を運営。09年から映画配給事業を開始。11年から(一社)国際平和映像祭を設立し国連が定めたピースデー9月21日に合わせてUFPFF 国際平和映像祭を主催している。法人名
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