2024年12月23日( 月 )

もはやアメリカに学ぶものはない?小売業最先端アメリカの実像(4)

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「旧き」を維持しながら新しきに?

重さ3トンの花崗岩に刻んだお客第一の原則で有名なスチューレオナルド

 同じくロングアイランドのファーミングデ-ル、エアポートプラザのスチューレオナルド。店舗数は5店舗ながら1店舗当たり年商は100億円以上といわれる。かつてニューヨークタイムズがスーパーのディズニーランドと呼んだこの店も楽しさの演出という面から見ると古びた遊園地といった印象が否めない。しかしながら、今でもその名声は確かに存在する。

 この企業と特徴は家族で働く従業員が多いことだ。加えて、できたてのデリカを始め、店内加工のペリシャブルフーズ(生鮮食料)が多い。それによって、顧客と従業員双方の信頼を高めている。しかし、店舗数はほとんど増えていない。店内加工の度合いが上がれば、品質を維持向上するために高い製造技術が求められる。アメリカの企業には珍しく、ほとんどスカウトをしないスチューレオナルドはその製造レベルの問題で大量出店が難しいのだ。

お客第一のポリシーは変えなくてもいいが楽しさの演出は変えなければ陳腐化する

 また、数少ないながら最近オープンした店舗では、店舗面積が縮小傾向にある。これは好立地の減少に加えて、集客力に起因した反対運動が起きていることにも原因がある。1日の客数が18,000人と聞けば周辺住宅地から見れば大変なことである。住民は居住環境の悪化、犯罪増加や交通混雑につながりかねないことを理由に強く出店に反対するのである。

 周辺になるべく多くの市場人口を必要とする生鮮重視の大型SMにとって、周辺住民からの反対は小さくない問題だ。人材確保と地域の反対、この2つの問題を考えると今後の拡大はいささか困難かもしれない。しかし、オーナーとそこに働く従業員にとって、それが不幸せとは限らない。自分の思いが実現できることこそ、働きがいの物差しである。自分の子供にも同じ職場で働いてほしい。そんな企業はそう多くはない。スチューレオナルドは家族、親族で勤務する従業員が少なくない。それはそれで貴重な存在なのである。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

 
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