もはやアメリカに学ぶものはない?小売業最先端アメリカの実像(6)
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コンテナストア
レキシントン通りのコンテナストア。フォーチュン誌の「働きがいのある企業ベスト100」に18年間選出されている優良企業である。その雇用では全応募者の3%しか採用しない狭き門だ。社員で採用されると260時間以上の研修を受けるのだという。その基本は「会社に対して満足度の高い社員は顧客からの高い満足を創造する」という考え方にある。
コンテナストアは女性の従業員比率が80%超。粗利益率57%を超えることでも知られる企業で、トップも女性である。店長の話ではトップ以下幹部は、社員満足と顧客のさまざまな要望に対していかに耳を傾けるかを心がけているという。
しかし、ここにもこれからの問題がないわけではない。Eオーダーの問題だ。チェックカウンターの奥に「注文はオンラインで、受取はどの店でも」という告知ポスターがある。ちなみにオンライン比率を聞いてみると50%近いという。まさか……と聞きなおすとチェック端末の中身をわざわざ見せてくれた。
確かに相当な注文がネット経由で飛んできている。旅行から収納、キッチン用品と多彩な品ぞろえではあるが、わくわく感あふれるお店ではない。言い換えれば何度か訪れれば、あとはオンラインで十分間に合うということもできる。しかし、この類の店だけでなく、リアル店舗の使命はとにかくお客に店に足を運んでもらうことだ。店での感動や共感こそ、店で商品を手に取ってのリピート購入につながる。
オンライン店舗受取は便利だが、オンライン自宅配送の比率が増えると店の売り上げが低下すると店舗は売上と利益を稼ぐ拠点から、コスト倒れの稼げない店舗へと変貌する。店のランニングコストが経営の重荷になるのだ。
百貨店のメイシーズなどにすでにその傾向が出ている。オンライン売り上げの伸びとともに店舗の売り上げが低下しているのだ。そのメイシーズは今年200店舗以上の閉鎖を予定しているという。ミレニアル世代のオンラインに偏重した消費動向にだけ目を向けると、メイシーズの二の舞になりかねない。杞憂かもしれないが、せっかく丁寧な教育と従業員第一主義で好業績を続けてきたこの企業のさらなる革新を期待したい。
(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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