2024年12月29日( 日 )

ヒアリの女王の発見で、フマキラーの株価が高騰したワケ(前)

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 環境省と福岡市は7月21日、博多港のコンテナターミナルで、強い毒性を持つ南米原産の「ヒアリ」数十匹が見つかった発表した。国内では、兵庫県や大阪府、東京都などで見つかっているが、九州で確認されたのは初めて。株式市場では、害虫対策の商品への需要が高まる期待から、関連企業の株価が上昇している。
 その代表銘柄が、殺虫剤国内3位のフマキラー(株)(東京都千代田区、東証二部上場)である。

ヒアリ駆除にいち早く協力したフマキラー

 強い毒性を持つ南米原産のヒアリが、国内で最初に見つかったのは5月26日、中国広東省広州市から神戸港に貨物船で運ばれたコンテナのなかにいた。続いて6月27日に名古屋港で見つかった後、7月4日には大阪市南港で女王アリが確認。7月6日には東京港大井埠頭でも発見された。
 インパクトが大きかったのは、7月4日に、大阪市南港で女王アリと見られる個体を含む50匹を確認したと環境省が発表したことだ。女王アリが見つかったことで、すでに繁殖の可能性が高まり、株式市場ではヒアリ銘柄騒動が勃発した。

 7月7日の株式市場で、フマキラーの株価が一時、1,289円まで値上がり、過去最高だった1987年の1,280円を30年ぶりに上回った。週明けの10日には、一時、1,370円まで上昇、年初来高値をあっさり更新。年初来安値の704円(4月13日)から1.9倍の高騰だ。

 フマキラーがヒアリ関連の代表銘柄になったのは、「外来種アリにはフマキラー」という評価が定まっていたからである。

 フマキラーは、兵庫県内でヒアリが国内で初めて確認された際、環境省と神戸市に「アルゼチンアリ 巣ごと退治液剤(1.8リットル)」「カダンアリ全滅シャワー液(2リットル)」などのアリ用殺虫剤を無償で提供。駆除作業にいち早く協力した。
 また今回のヒアリだけでなく、2011年に東京・大田区で確認された特定外来生物アルゼンチンアリの駆除作業時も、環境省や独立行政法人国立環境研究所と提携し、防除手法の開発に協力してきた。
 ヒアリ、アカカミアリ、アルゼンチンアリ、コカミアリなど、有害な特定外来生物に指定されているアリについては、フマキラーが先行している。

ベトナム、インドネシアではトップシェア

 フマキラーは1890(明治23)年、大下大蔵氏が広島で薬種問屋「大下回春堂」を創業したのが始まり。1920(大正9)年に殺虫剤「強力フマキラー液」を開発した。商品名の由来は、ハエ(フライ)、蚊(モスキート)、退治(キラー)を組み合わせて造語。語感の良さから「フマキラー」とした。後に会社名になる。
 戦後の50年に株式会社に改組。63年には世界初の電気蚊取「ベープマット」を発明、ヒット商品となった。大下俊明会長(68)と大下一明社長(59)の兄弟は、創業者の三代目だ。

 フマキラーの17年3月期連結決算は、売上高が前期比17%増の423億円、営業利益は同22%増の22億円、純利益は23%増の13億円。12年同期は最終赤字、13年同期も営業赤字を計上していたが、以後、4期連続の増収・増益となった。主力の殺虫剤の売上高は256億円、22%増と大きく伸張した。

 業績を牽引したのは、海外だ。海外売上は195億円で、海外売上比率は46.2%と1.6ポイント上昇した。12年に買収したインドネシアの子会社フマキラーアジアが2ケタ成長を遂げ、国内不振を補った。

 フマキラーは長年にわたり、アジア地域をはじめ感染症対策の最前線で活躍してきた。海外に開発拠点を設置し、現地の害虫を徹底的に研究。高い製品力が評価され、ベトナム、インドネシア、イタリアをはじめとする多くの国で、シェアナンバーワンを獲得している。

(つづく)
【森村 和男】

 

(後)

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