2024年12月29日( 日 )

ファウンドリ市場に半導体大手が続々加勢(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 ファウンドリビジネスは現在、なぜそれほど注目が集まっているのだろうか――。

 まずは、人工知能、IoT(モノのインターネット)、メディカル、環境関連など新産業の誕生で、多くの需要が見込まれていることが挙げられる。

 それに、世界各国の半導体企業は、巨大設備投資というリスクを回避し、製造工場をつくらず、製造はファウンドリに依存するという傾向が強まっている。
 なおファウンドリは、多く企業の製品を委託生産することにより、製造コストを抑えることができるメリットもあるし、高度なプロセス技術も保有している。そのため、ファブレスは自前で設備を持つリスクをとるよりは、ファウンドリに委託生産した方が有利になる。ファウンドリビジネスは、セット機器会社の開発計画を把握しておけば、それほどリスクのあるビジネスでもない。それに半導体市場は成熟状態であっても、ファウンドリ市場は今後年10%近くの成長が予測されているので、魅力的な市場でもある。

 このファウンドリビジネスに、インテルもサムスン電子も本腰を入れており、市場の激変が予想される。おそらく今後、市場の競争が激化していくなかで、ファウンドリ市場は TSMC、インテル、サムスン電子――この“3強”に集約されていくだろうというのが、専門家の一致した予測である。

 インテルの場合、パソコンの成長に陰りが見えてきており、CPU一本に頼るにはリスクが大きすぎる。インテルは13年にファウンドリビジネスに参入し、英国のARMと手を組み、携帯電話のCPUであるアプリケーションプロセッサを製造し、LGに供給している。インテルは多くの人材を抱えているだけでなく、非メモリの世界王者であるだけに、ファウンドリビジネスでも成功の可能性が高い。

 サムスン電子は、現在はファウンドリビジネスでは市場占有率7.9%で4位になっている。しかし、サムスン電子はファウンドリ事業部を新設し、まずは短期目標としては世界2位を目指し、TSMCを追い抜いて、ファウンドリ事業でも世界1位を目指している。
 サムスン電子はTSCMCと競合するために、7ナノ工程技術をまず確立し、その後6ナノでTSMCを追い抜くという計画を樹立している。そのため、サムスン電子はオランダのASML社から極端紫外線装置(EUV)を今年2台、来年7台を導入する計画だ。この装置は露光装置で、ウェハーに回路パターンをつくる機械である。「この装置が導入されると、TSMCに比べ、価格の面でも、歩留まりの面でも、当社は有利な立場になるだろう」とサムスンの担当役員は説明している。

 一方、ファウンドリビジネスの絶対的な強者は、TSMCである。世界市場シェア50.6%で、圧倒的な1位である。最近、ファウンドリ市場の最大顧客であるクアルコムとアップルから7ナノ技術を適用したアプリケーションプロセッサの委託生産を受注し、快進撃を続けている。TSMCの売上高は261億1,000万ドル、営業利益は99億800万ドル、営業利益率は37.9%を記録している。TSMC社はファウンドリ事業だけで、半導体事業総合順位3位にランクしているだけでなく、高い利益率を実現している。

 去年の半導体の世界市場規模は3,473億ドルであったが、メモリはそのなかで23%を占め、残りは非メモリであるシステム半導体であった。今後、新たなアプリはシステム半導体の成長を加速するに違いない。ファウンドリ市場は、メモリ市場よりはまだ少し小さい。しかし、毎年7%程度の高成長が予測されていて、このビジネスに興味を示すのは当たり前かもしれない。市場調査機関IHSによると、2020年のファウンドリ市場は766億ドルの市場に成長することが予測されている。

(了)

 
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