VRは大きな産業に成長するのか?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
最近、「VR」という言葉をよく耳にするようになった。世界的なIT企業は現在、VRビジネスに巨額の投資を行っている。ゴールドマン・サックスは、VR市場の規模が2025年には1,100億ドルを超えると予測している。この市場規模は、現在のTV市場とパソコン市場を上回る数字であり、VRに巨額投資が行われる理由でもある。
ただ、VRが一般にはまだそれほど普及していないだけに、この話は皆さんにピンと来ないかもしれない。
今回は、今後、私たちの日常生活に溶け込んでいくかもしれないVRビジネスについて、その可能性と課題を取り上げてみよう。VRとは、「バーチャルリアリティ(Virtual Reality)」の略で、日本語では「仮想現実」とも訳される。バーチャルとは、限りなく現実に近いというニュアンスを持っている言葉で、現実ではないが、写される映像によって、まるで体験者がその世界にいるかのように感じさせることを意味する。
現在、VRはゴーグル型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を頭にかぶって体験するのがメインだ。ヘッドマウントディスプレイ内部には映像が表示され、その映像を見ることによって、あたかもバーチャルな空間に自分が実在しているように錯覚するのだ。このヘッドマウントディスプレイは、体験者の頭の動きに合わせて映像が自然に変わるようになっている。
VRコンテンツを見るためには、今のところヘッドマウントディスプレイが必要になるのだが、それをパソコンなどのハードにつないで見るタイプと、スマートフォンをなかに入れて使うタイプと、大きく2つに大別される。実は、最初のVRブームが訪れたのは1990年代のようだ。しかし今回、これだけVRが注目を集めるようになったのには理由がある。それは、今まで問題があったヘッドマウントディスプレイの視野角や解像度などの問題がクリアされ、完成度が高くなったからだ。またデバイスだけでなく、コンテンツのほうもCG技術の進歩などにより、その質が大きく向上された。
ヘッドマウントディスプレイでは、台湾の「HTC Vive」と、Facebookに買収された「Oculus Rift」、それにソニーのプレイステーションVRが3強になっている。スマホを活用したものでは、サムスン電子の「Gear VR」、それからローエンド戦略のグーグルの「Google Cardboard」などがある。このように、デバイスとコンテンツの両方で条件がそろったことによって、VRの新しい産業としての可能性が拓かれたわけだ。
Facebookは、試作機しかつくっていない「Oculus Rift」を20億ドルで買収したし、グーグルも「Magic Leap」に5億4,200万ドルを出資し、VR産業の発展を加速させる役割を果たしている。VRは、ゲームや映画などのエンターテインメントのみならず、テーマパークや製造業、旅行、住宅業界、医療にも利用され、今後、大きな成長が期待されている。
(つづく)
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