2024年11月13日( 水 )

VRは大きな産業に成長するのか?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 現在、VR市場ではグローバルIT企業を中心にヘッドマウントディスプレイの開発だけでなく、VRコンテンツの開発、それから流通のためのフラットフォームの構築を急いでいる。VRビジネスは今後、新産業として大きく成長することが見込まれ、多くの企業が参入を始めている。

 市場調査会社「TrendForce」の調査レポートによると、ハードウェア、ソフトウェア両方を合計した市場規模は、2020年までに700億ドル(8兆4,000億円)規模に到達すると試算されている。VR市場の成長性に、異議を唱えるところは皆無である。
 一方、このような状況下で、韓国のVR市場に目を向けると、16年に1兆3,735億ウォンの市場規模で、年間42.9%の成長率で成長し、20年には5兆7,271億ウォンに達すると予測されている。しかし、サムスン電子、LG電子が主導したモバイル型のデバイス普及が中心で、コンテンツの開発はあまり進まないことが懸念されている。

 それでは、VRにはどのようなメリットが存在するのだろうか。

 VRは、体験者に対して、閉鎖的で没入する空間を提供する。テレビなども4Kなど解像度が向上し、臨場感が増しているが、没入感においてはVRにはとても適わない。VRはゴーグルを装着し、自身の周囲を見ることができず、バーチャルな世界に浸ることができるので、今までにない体験を与えることができる。もちろん今でもテーマパークに行くと、椅子が動くなどの体験型の施設はある。しかし、それは高価な施設で、どこでも利用できるようなものではなかった。しかし、VRが登場したことで、そのハードルはかなり低くなり、今後、ヘッドマウントディスプレイは個人にまで普及するようになるだろう。その間、VRを活用したアトラクションが増えていくに違いない。

 日本でもユニバーサルスタジオジャパンなどでVRを活用した体験施設が登場し、人気を集めているが、韓国でも同様である。エバーランド、ロッテワールドなどでは、既存の施設にVRを取り入れて人気を博しているし、今後、その市場は拡大を続けるだろう。ソウルにはVR体験室が登場し、長蛇の列ができているし、都心型VRテーマパークをシスコシステムズと韓国のパペタ社は、仁川での建設を計画中である。

 VRの可能性に真っ先に気づいたのは、映画やゲームなどのコンテンツを制作する会社である。既存ゲームまたは映画で成長の限界を感じているなかで、VRに新しい可能性を見出している。それだけでなく、VRは多くの分野に応用が利くので、それもVRが高く評価される理由である。こうしたVRの将来性に、Facebookのザッカーバーグも巨額投資を決断したのだろう。
 自動車などの製造業では、製品を設計する段階で衝突などが起こったときの試験が行われる。それを、VRを使ってシミュレーションすることによって、期間と短縮のコストの削減が実現できる。ウェディング産業や住宅産業などでも、VRは仮想体験を経験させる方法として活用されている。また、遠隔医療、旅行、サービス業などでも、新しいビジネスモデルが誕生することが期待されている。たとえば旅行の場合だと、忙しくて旅行に行けない人でもVRを活用することによって、実際に旅行に行ったような気分を味わうことができるようになるだろう。

 最後に、VRビジネスの課題は何だろうか。まず、ヘッドマウントディスプレイはまだ高価であり、一部のマニアでない限りそれほど購入には至っていない。それにパソコンの高仕様まで考慮すると、VRの普及にはまだ時間が必要になる。デバイスが普及しないと、コンテンツもそろわない。今現在は、そのような状況である。ところが、テーマパークなどでVR体験をしたユーザが増えていくと、かなり普及にも勢いがつくだろう。
 それにデバイスが標準化されていないため、コンテンツを開発しても、全部のデバイスに使えないという限界もある。

 そうしたさまざまな課題を克服し、VRは今後、間違いなく大きな産業になるだろう。

(了)

 

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