トルコで見た『正義の行進』100万人集会の背景と行方(中)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
そんななか、騒がしい中国人観光客も驚き、声を失うような事態が発生した。何かといえば、トルコ史上最大と目されるデモ行進である。何と、首都アンカラから最大都市であるイスタンブールまで450kmを、25日間かけて踏破するデモが繰り広げられた。このデモは、最大野党である「共和人民党(CHP)」のクルチダルオール党首が呼びかけたもの。合言葉は「正義を求める行進」。
6月15日にアンカラを出発し、参加者が「正義」と大書した看板を掲げながら大雨と熱波の襲うトルコ国内を最終ゴールのイスタンブールを目指して行進をした。当初は、数千人規模であったが、瞬く間に党派を超えて多くの市民が行進に加わり、5万人から10万人へと規模が膨らんだ。
一行がイスタンブールに到着したのは、7月9日であった。彼らを迎えるために、100万人を超える大群衆が集まることに。市内のいたるところに、彼らを歓迎する垂れ幕が掲げられた。なぜ、これだけ多くの人々が苦しい行進を続けたのか。また、その労をねぎらうために集会場所に足を運ぶことになったのであろうか。
実は昨年7月、エルドアン大統領を政権の座から追い落そうとするクーデター未遂事件が発生した。事前にその情報を把握していたとの噂も流れているが、エルドアン大統領はクーデターを企てた一部の軍人たちをたちどころに粉砕してしまった。その際、250人の人々が命を失った。
エルドアン政権は、このクーデターを首謀したのはアメリカに亡命中のフェトフッラー・ギュレン師だと断定し、アメリカ政府にその引き渡しを求めている。そのうえで、軍人のみならず、政府の職員や学者、マスコミ関係者などを次々と逮捕、拘束したのであった。その数は5万人に達し、警察官9,000人を含む、職場を追放された人々の数は15万人を超えるという。
加えて、1,000社を超える民間企業が「ギュレン師と関係がある」との理由で、政府の管轄下に置かれることになり、これらの企業の所有する資産はすべてオークションで売却され、政府の所有するファンドに組み込まれることになった。こうした企業で働く5万人近くの労働者たちも職を奪われることになってしまった。政府が没収したこれら民間企業からの資産は、110億ドルに達するという。
こうした強権的なエルドアン政権の対応に対し、反旗を翻そうとして立ち上がったのが今回のデモ行進である。かつて、インドのマハトマ・ガンジーがイギリスからの独立を求めて、1930年にインド国内で大規模なデモ行進を行ったことは歴史に刻まれているが、今回のトルコにおける大規模なデモも、それにちなんだものと思われる。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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