IR推進法成立 日本でカジノは実現するのか(後)
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2016年12月、「カジノ法」として注目を集めるIR推進法が国会で成立した。このIR推進法の成立から今度は1年以内に、カジノ解禁への法規制を含めた実施法案を策定することになっており、政府は秋の臨時国会での実施法案の提出を目指している。だが、国内での事例がなく慎重になりすぎるあまり、厳しすぎる規制に懸念の声も。また、誘致に名乗りを挙げている各自治体でも、それぞれに課題を抱えている状況である。果たして、日本でカジノは実現するのだろうか――。
だが、一方の大都市にも不確定要素はある。たとえば東京都の場合、石原慎太郎氏が都知事を務めた時代にお台場でのカジノ構想が持ち上がったものの、その後は舛添要一氏が誘致に消極的だったことに加え、現在の小池百合子東京都知事は、IR誘致を優先課題には掲げていない。小池知事は観光振興が大きなポイントとなるとした一方で、懸念材料もあるため引き続き検討が必要との考えを示している。
一方の大阪はこれまで、着々とカジノ開設への準備を進め、松井一郎大阪府知事を筆頭に誘致活動を積極的に展開してきた。現在、大阪では大阪市の西端にある人工島・夢洲にIR施設を整備する予定にしているが、夢洲は埋立地のため、電気・ガス・上下水道・道路・鉄道といったインフラの整備が新たに必要になる。カジノそのものの建設費も莫大になるだろうが、周辺のインフラ整備にも多額の建設費を投じることになる。しかし、カジノには経済的恩恵というメリットがある一方で、治安の悪化や交通渋滞といったデメリットもあるため、巨額の税金を投じてまで誘致すべきかという議論も一部で持ち上がっている状況だ。
さらに、有力地の1つと見られている横浜でも現在、誘致をめぐってある種の正念場を迎えているが、これについては後述する。
そうしたなか、大都市圏ではないが、長崎県と佐世保市はIR誘致に名乗りを上げ、取り組みを本格化させている。長崎県は、ハウステンボス(佐世保市)にカジノを併設することを想定しており、地域浮揚の起爆剤として期待を膨らませている。佐世保市の場合は、事業者はすでに決まっているようなもので、官民一体となって誘致に取り組むことで、実現の可能性は高まるだろう。
試金石となるか 横浜市長選
こうしたなか、今後の日本でのカジノ実現の可否を占ううえで、注目を集めた首長選挙があった。それが、7月16日告示、30日に投開票が行われた横浜市長選だ。
同市長選では、現職の林文子氏(71)のほか、新人で元衆議院議員の長島一由氏(50)、新人で元民進党横浜市議の伊藤大貴氏(39)の3人が立候補。各人とも激しい選挙戦を繰り広げていたが、その最大の争点とされていたのが「カジノ誘致の是非」である。3選を目指す自公推薦の現職の林氏は、これまでカジノを含むIR推進の安倍政権にべったりの姿勢で、自民党言いなりの市政を進めてきた。対する長島・伊藤両氏はカジノ反対派だ。だが林氏は、地元紙が行った世論調査の結果などでカジノ反対派が多いことが報じられるとトーンダウン。カジノ誘致の姿勢を鮮明にし過ぎると、カジノ反対派の市民からはもちろんのこと、カジノ法への反発姿勢を見せている公明党などの従来の支持層からもそっぽを向かれる可能性があるため、選挙戦ではカジノ推進の姿勢を隠すなどして論戦を回避している。
横浜市ではこうした状況のため、林氏以外の2氏が当選した場合にカジノ誘致が暗礁に乗り上げるのはもちろんのことだが、林氏が当選した場合でも、従来のようにカジノ誘致を推進していくことは難しい状況となっていた。
こうして迎えた30日の投開票日。結果として、林氏が2位以下に大差をつけて見事3回目の当選を果たした。とはいえ、林氏が当選したからといって、前述したように積極的にカジノ誘致を進めていくわけにもいかない状況である。今後の横浜での動向が、将来的に日本でカジノが実現するかどうかの1つの試金石となるだろう。
(了)
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