大河ドラマ・直虎で脚光の「井伊家」 受け継がれた彦根城の魅力(後)
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彦根城は見事な石垣と美しい天守を持つ魅力溢れる城だ。筆者が初めて彦根に足を運んだのは2015年の6月で、同年10月に再訪するほど心を撃ち抜かれた。初めて登城したときの気持ちを思い起こしながら項を進めたい。
彦根城とは
彦根城(滋賀県)は彦根山に築かれた平山城で、慶長8(1603)年に井伊直政の嫡男・直継が父の遺志を継いで築城に着手、元和8(1622)年に完成した。全国に12ある現存天守を持つ城の1つで、昭和27(1952)年に天守閣が国宝に指定された。その他、現存する天秤櫓・太鼓門櫓・三十櫓・佐和口多聞櫓も国の重要文化財に指定されている。
彦根城が建つ滋賀県彦根市は、琵琶湖の湖東に位置している。JR彦根駅の西口を出て、真っすぐ進んで行くと、10分ほどで彦根城の大きなお堀と、美しい天守閣が見えてくる。お堀では白鳥と黒鳥の2羽が優雅に水面を泳いでいた。
彦根城下を歩く
美しい松が並び、「いろは松」の名がついた松並木を真っすぐ進む。穏やかな風が吹くたびに、松の葉がかさかさと音を鳴らす。歩いているだけで、不思議と穏やかな気持ちになれた。
松並木を抜けると、彦根城の城門の1つである「佐和口多聞櫓」が見えてきた。一見、道が行き止まりになっているように見えるが、実際は左右食い違うように建てられた櫓により、道は屈折に近い曲折となっている。かつては左右の櫓を繋ぐ櫓門が存在し、天守へと続く表門に通じる入口として重要な役割を担っていた。
なお、現在は向かって右側の櫓(1960年に再建)が「開国記念館」として、左側の櫓(1769年頃に再建)が「佐和口多聞櫓」として、それぞれ異なる名称で呼ばれている。開国記念館では彦根の歴史や当時の資料が展示され、佐和口多聞櫓では当時を偲ばせる装飾のない櫓の姿を見ることができるが、現在内部は非公開となっている。
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復元された彦根藩の表御殿
櫓を過ぎると、表門橋が見えてくる。この橋の向こうが現在の「彦根城」だ。青々とした木々と、積み上げられた石垣が美しい。橋を渡り終えると、彦根城の観覧チケット売り場と彦根城博物館がある。
彦根城博物館では、彦根藩主だった井伊家にまつわる資料の展示を行っており、前編で触れた「井伊の赤備え」も展示されている。
その他にも貴重な古文書などの展示も行われているが、魅力的なのは展示物だけでない。彦根城博物館は、彦根藩の政庁だった表御殿を復元し建てられたものなのだ。
奥に進めば進むほど、その姿は資料館から表御殿へと変わる。当時の姿を再現した、茶室、御座之御間(藩主が生活した居間)や能舞台、日本庭園などを堪能することができる。内部は迷うほど広く、まるでタイムスリップして探検しているかのような気分が味わえた。※クリックで拡大
美しくも実践を想定した城の姿
城には大きく分けて「戦うための城」と「権威を象徴するための城」がある。彦根城は前者だ。
彦根城には全国的にも珍しい「登り石垣」が5カ所に築かれている。これは山を登って侵入してくる敵の動きを阻止すためのものだ。
次に、「大堀切」と呼ばれる造りだ。場所と場所との間の土を大きく削り、分断する。彦根城の大堀切には橋が架けられており、有事の際にはこの橋を落とせば、敵はその先への侵入が困難となる。一般的に山に築かれた山城に用いられる造りであるため、彦根城のような平山城にあるのは珍しいといえる。
また、現存する美しい天守も実践を想定して造られている。
天守には敵を撃つための「鉄砲狭間」と「矢狭間」が計82カ所、しかもその一部は外から見えないように隠されている。また、破風(はふ)と呼ばれる天守の飾りの内側に「破風の間」という小部屋が4カ所に設けられており、内部にある鉄砲狭間から敵を撃つことができる。外からでは美しい飾りにしか見えないので恐ろしい。
しかし、この外観と内観とのギャップこそが彦根城の最大の魅力だ。天守からは、彦根の町や琵琶湖、そしてかつて三成の居城があった佐和山も一望することができる。※クリックで拡大
受け継がれた彦根城
彦根城は1622(元和8)年の築城以降、井伊家の下で受け継がれてきたが、1871(明治4)年の廃藩置県によって陸軍省の管轄となり、解体の危機を迎える。城内の一部の建造物が取り壊され、天守の払い下げ・取り壊しの話が浮上するなか、1878(明治11)年に明治天皇が天守保存を命じたことにより解体を免れることができたのだ。
その後、彦根城は1891(明治24)年に陸軍省から宮内省へ所管替えされた後、井伊家へと返された。そして1944(昭和19)年、最後の彦根藩主・井伊直憲の長男である井伊直忠によって、彦根城は彦根市に寄贈され、1952(昭和27)年に彦根城天守が国宝に指定された。直虎が守った井伊家。そして、井伊家が築き、受け継がれてきた彦根城。実戦を想定しながらも、美しさを兼ね備えた姿はまさに名城。泉下の直虎も誇らしく思っているのではないだろうか。
現在、彦根城では「国宝・彦根城築城410年祭」を開催している。この機会に、今なお人々を魅了し続ける彦根城へと、ぜひとも足を運んでみてほしい。(了)
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