儀式としての葬儀から故人を悼むための弔いへ(前)
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数十人、数百人の参列者が集まり、喪服を着て僧侶の読経を聞く。そんな一大行事としての葬儀は時代遅れではないか、という声が上がり始めたのはここ十数年だろうか。小規模な結婚式が増えてきたのと同じく、葬儀もだんだんとコンパクトなやり方をする場合が多くなってきた。ここで改めて、葬儀の位置づけと歴史を振り返ってみよう。
儀式だけでなく 生活に結びついた仏教
1人の人間の人生を締めくくる大切な儀式、葬儀が変革の時を迎えている。
かつて葬儀は、故人の遺徳をしのぶだけでなく、家の威勢を示す1つのデモンストレーションだった。そこに、儀式としての重みを加えていたのが仏教の存在である。まずは、儀式宗教としての仏教が現在の葬儀にどのような役割を果たしているかを見ていこう。
通夜、葬儀・告別式、初七日、火葬、納骨、墓の開眼、四十九日、新盆に一周忌と、日本の伝統的な葬儀にはほとんどの局面で仏教が介入する仕組みになっている。また、現在は行うことは少なくなったが、初七日から四十九日までは、本来は七日ごとに法要をおこなう必要があるとされている。二七日、三七日と命日から7日ごとに閻魔大王の裁きを受け、七七日にあたる四十九日に、極楽に行けるかどうかが決まる、ということになっている。
しかしそもそも、この七日法要という考え方自体が仏教由来のものではない。閻魔大王が道教から来ていることからもわかるように、これは道教由来の儀式である。日本の仏教は往々にして「葬式仏教」などとそしりを受けるが、これは仏教が伝来してくる途上で経由した、中国の宗教儀式が混合したものなのである。
さらに日本の仏教は、宗教以外の要素とも混合している。江戸時代になると、幕府は住民管理システムに各地の寺院を組み込んだ。当時のお寺は、いわば宗教施設と町役場を合わせたような存在だったのだ。今に残る檀家制度の一端はここにあるといってよい。
明治維新以降、それまで個人単位だった墓が家族墓(いわゆる「○○家代々之墓」というスタイル)に変わるのと歩調を合わせて、葬儀は「家」の儀式として定着した。そして今日、家族制度が解体への道を歩むなかで、葬儀はふたたび個人の儀式へと回帰しようとしている。
縮小する葬儀業界 直葬・家族葬増が原因か
葬儀の様相が変化している1つの証左として、「特定サービス産業実態調査報告書 冠婚葬祭業編(2016年版)」を見てみよう【表1】。
従業者数は12万1,028人で前年比6.3%の減少。売上高は1兆9,696億円で前年比13.8%の減少と、減少の一途をたどっている。事業所の数は9,609カ所で、200カ所以上の純減となっている。これは「冠婚葬祭業」の数字であり、葬儀業務に限ればその落ち込みの度合いはより明らかになっている。
【表2】は15年のデータだが、結婚式業務と葬儀業務のどちらに費用をかけることが望まれているか、はっきりとわかる結果になっている。売上自体は4倍近い差がついているものの、結婚式業務では挙式に関わる費用以外すべてが大幅な伸びを示している一方で、葬儀業務は式典や会場に関わる費用、飲食や生花、さらには香典返しなどの返礼品に至るまで、すべての部門で売上が激減する様相を示している。さまざまな理由が考えられるが、「直葬」「家族葬」などといわれるより小規模な葬儀が増えていることが主因であろう。日本消費者協会の「葬儀のアンケート調査」によれば、葬儀費用は年々減少の一途を続けている。
ここには表れていないのが、僧侶へのお布施である。これこそ、消費者からもっとも強い費用削減の圧力がかかっているポイントである。
(つづく)
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