2024年12月23日( 月 )

欠陥マンション訴訟で浮き彫りになる久留米市の職務放棄(後)

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曖昧かつ無責任な久留米市の主張

 「新生マンション花畑西」の設計上の問題において、最もわかりやすい事例が、『外階段の構造的欠陥』(下図参照)である。原告(「新生マンション花畑西」の区分所有者ら)は、設計図に描かれた梁が施工されておらず、出隅通路の薄いはね出しスラブでは構造的対応が成立しないこと、一本杭で安定を欠き地中梁で緊結されてないことなど、設計図と現場の状況による階段崩壊の可能性を指摘している。

 一方、被告・久留米市は、反論で「設計者の工学的判断にゆだねられていたので、安全ではないとは言えない」などとし、構造的安全性の具体的根拠について何ら示そうとしない。しかし、「久留米市のいう『設計者の工学的判断』は、設計図や現場のどこにも見当たらない」(協同組合 建築構造調査機構・仲盛昭二理事長)という。

 『建築確認』というチェック機能を有する行政機関であるならば、しかるべき工学的根拠を以て反論すべきではないか。自ら、その根拠を見出さず、示そうともしないのであれば、建築確認そのものの存在意義に大きな疑問符がつく。久留米市の論法だと、建築構造の欠陥は、すべて「よくわからないが、何らかの安全性が確保されているかもしれないので問題はない」という、実にいい加減な審査で見逃されることになる。

 「久留米市の態度は、建築基準法に則り、真摯に構造検証を行っている技術的行為を完全否定している。わが国の既存建物の構造検証と、危険性を指摘する行為を否定することにもつながる。また、久留米市の主張が通るのであれば、『耐震改修促進法』で耐震改修を指摘され義務付けられた建築物であっても『何らかの安全性が確保されている可能性がある』と主張すれば、指示に従わないことも可能になってしまう」と、仲盛氏は警告を発する。ちなみに、「耐震改修促進法」では、久留米市のような根拠なき言い逃れは一切許されず、改修に従わない建物は利用できず、解体するしか道はない。

 「新生マンション花畑西」をめぐる、もう1つの裁判(被告:木村建築研究所、U&A設計、鹿島建設)で、設計の瑕疵を認める判決が下された場合、建築確認審査における久留米市の責任(審査能力・使命感の欠如によるノーチェック審査、フリーパスの確認済証交付)が明らかとなる。久留米市は、前言を撤回し、非を認めざるを得なくなるはずだ。もし、それでも、非を認めないのであれば、法令遵守を無視した“職務放棄”にほかならない。

 重大な事実誤認があった1審判決と併せて、本日(8月23日)の控訴審は、行政と司法が良識を働かせ、正常な判断を下す機会でもある。日本の建築に「作った者勝ち」という現実があることを立証することがないように祈りたい。

(了)
【文・山下 康太】

 
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