2024年12月28日( 土 )

ヨシヒコのぶらり漫歩シリーズ・南北海道は冷夏なり(4)~外国人様様(後)

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再建は楽ではなかった

 洞爺湖サミットを行ったからといって、すぐに業績回復につながるわけでもない。2008年が過ぎても、客足が急増するわけではなかった。なにせ470室の満室ともなれば、最低でも1,000人以上の宿泊者数に達するのである。こんな1,000人単位のお客を確保することは、至難の業だ。

 そしてこのザ・ウィンザーホテルの致命的な欠陥は、冬場の稼ぎができないことである。スキーリゾート事業を真剣に検討していなかった。だから、夏場の稼ぎに依存する傾向にある。

 ところが現在、11月10日までは満室状態になっているとか。信じられない話である。13~14両日滞在してわかることは、レストラン・周辺で見かける外人客数が多いということだ。一族一党の家族旅行が、ほぼ3分の1を占める感じである。中国・台湾・韓国の人たちが大半であろう。結構お金を浪費してくれている、ありがたいお客でもある感じだ。この“外国人様様”のおかげで、後述のような業績回復を果たしているのであろう。

豪華さが売り物

 洞爺湖と太平洋とを同時に臨める立地が、このホテルの売り物の1つである。そして、ホテルフロントのつくりを写真で見ていただきたい。非日常的な豪華そのものである。フロント奥ではピアノ演奏が1日中流れている。椅子に座るとスタッフが近づいてきて、『歓待飲み物』の誘いを行う。飲んだのはザクロジュースであっただろう。かなり高級なものと見立てた。まずはホテル内に入れば、未知の非日常生活を体験させることに徹している。

 部屋は、2人部屋としてはかなり広く、中級クラスの空間を提供してくれているので安らぎを得られる。大柄な外国人たちでも、3~5日間の滞在には満足するのではないか!!
 朝の新聞サービスを発見したが、英字新聞が隣・近所の部屋5カ所に配布されていた。部屋に用意されているシャンパン・ワインも上級ものばかり。我々が宿泊した料金は1泊2人で7万円であった。

 2泊の食事は、フレンチと創作和食を選んだ。ホテルの料理董事長は業界でも名の売れた存在のようである。この料理董事長のこだわりは、地元から食材を調達することだそうだ。本人自ら生産者のところをめぐり、最適なものを見つけ、取引を始めるとか。料理手法にも感動したが、たしかに素晴らしい食材を堪能させていただいた。山頂に君臨するザ・ウィンザーホテルの運営が持続する限り、地元・近郊の生産者たちも共生していけることは素晴らしいことである。地元からも尊敬される存在となる。

 ホテル内にある土産物屋は、単にそのあたりの名産を並べた土産物屋ではない。ブランドものにこだわった品ぞろえである。北海道銘酒も3合5,500円クラスを並べている。
 南北海道は寒かったので、女性客はジャケットを買い求めていた。最低でも2.5万円クラスであったとか。
 「ほー、高級なお客だけを集めているのか?しかしなー」と、疑問を持たれる方も必ずいらっしゃる。「それで満室にできるわけがない」という謎解きに、躍起になられておられる。まさにこの疑問を抱くことは、至極賢明な思考の持ち主であることを証明している。

 旅行に関心がある方々誰もが、新聞の旅行広告の欄に注視されるはずだ。そこに『あのサミットのあったザ・ウィンザーホテル宿泊旅行5.9万円~』が大きく宣伝されていることを、必ず発見されるであろう。もちろん、交通費込みのツアー代金であることは言うまでもない。低価格の方々には、その低価格並みにメニューをそろえて、差別化ビジネスモデルで対応しているのである。
 このような低価格の強かな集客戦略もなければ、毎晩1,000名のお客を確保することは、土台無理なのである。

(つづく)
【青木 義彦】

 
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