サムスン電子の副会長、懲役5年の有罪判決(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は、李健熙会長の長男で3代目。李健熙会長は、サムスングループを世界的な企業に成長させた人物だが、残念ながら後継者の準備は全然していなかった。
ところが2014年5月に、李健熙会長は突然心筋梗塞で倒れた。李健熙会長の回復が難しくなると、サムスングループ内部では後継者の準備を急ぐことになる。
この時点で李副会長は、サムスンのトップにはなっていたが、グループを完全には支配していなかった。そのなかで進められた後継の準備が、サムスン物産と第一毛織の合併である。
だがこの過程で、サムスングループは第一毛織の2番目の大株主である米国のファンド会社の反対に遭う。それで、この問題を解決するために、第一毛織の筆頭株主である国民年金基金の協力が必要だった。それを朴槿恵(パク・クネ)前大統領に頼む代わりに、サムスンが朴前大統領に賄賂を提供したというのが、特別検察官の主張である。李副会長は、朴前大統領の親友である崔順実(チェ・スンシル)被告に213億ウォンの乗馬への支援を約束し、実際に協力した金額は77億9,735万ウォン。それにミル財団とKスポーツ財団にも220億ウォンの賄賂を贈ったという疑いで逮捕された。これが賄賂として認められるためには、朴前大統領と崔氏が示し合わせて賄賂を要求し、李被告は見返りを期待して賄賂を贈ったということが立証されなければならない。
特別検察官は、李被告は経営引き継ぎに協力してもらうため、朴前大統領と3回会っているし、その3回の面談のなかで、そのような協力を要請したと見ている。
一方、サムスン側は特別検察官が主張しているような必要性はなく、とくに乗馬への支援などは李被告に報告されていないと、容疑を否認している。この裁判を理解するためには、サムスングループの支配構造と李副会長を理解する必要がある。
サムスングループは、グループ内の企業同士が互いの株を持ち合う「循環出資」という複雑な構造になっている。サムスングループの中核企業は、半導体や携帯電話、ディスプレイ事業などを行うサムスン電子だが、実は李副会長は同社の株を0.56%しか保有していない。それでもグループのトップとして影響力を行使できるのは、前述の循環出資の方式で、少ない株式でも回りまわって巨大グループが掌握できるようになっているためだ。
しかし、今のままではまだ完全に経営を掌握したとは言えず、父親の株を引き継ぐためにも、相続税などを解決するためにも、資産がもっと必要であった。そして無理矢理経営引き継ぎを行う過程で、今回のようなことが行われた。一方、トップが刑務所に入っているなかでも、皮肉にもサムスンの業績は絶好調である。
先月発表されたサムスン電子の4~6月決算を見ると、第2四半期のサムスン電子の連結営業利益は14兆ウォン(1円=10ウォン)で、前年同期比72%増だった。世界経済が低迷しているなかで、驚異的な数字である。ちなみに、アップルの第2四半期の営業利益は105億ドルで、営業利益でサムスンは競合のアップルをも追い抜いている。
サムスンは、経営がシステム化されているので、トップがいなくても会社の経営には問題ないという人がいる反面、大きな投資案件は全部ストップしており、間もなく経営に影響が出てくると懸念する人もいる。最後に、今回の判決の影響とサムスンの行方について考えてみよう。
李被告が有罪になったということは、賄賂を贈ったことが認められたことになるため、賄賂を受け取った側も有罪になる可能性が高い。つまり、朴前大統領の判決にも影響を与えるのは必至である。また、李被告が有罪判決になったことで、他の財閥も慎重になるだろう。今までと違って、財閥も悪いことをすると有罪になるということで、法律を守ることに敏感にならざるを得なくなるだろう。
一方、今回の裁判で有罪判決が出たことで、サムスン側は控訴することになるだろう。そのため裁判は、さらに1年以上かかることが予想される。だが、それによってサムスンの経営空白期間が長くなり、果たして経営復帰できるかどうかを懸念する向きもある。(了)
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