光触媒コーティング剤でブルネイに新たな産業創出を(後)
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(株)ケミカル・テクノロジー 代表取締役
ブルネイ大学 理学部 非常勤教授
北村 透 氏石油や天然ガスを潤沢に供給するエネルギー産出国であるブルネイ。その一方で産業創出や失業率対策が国策として挙げられているなか、日本企業がその問題解決と新たな産業カテゴリーとして取り組んでいる。
失業率の歯止めがブルネイの未来を切り拓く
たしかな品質と機能性を持つ商品を開発した同社。「この事業にブルネイの将来がかかっている」という北村氏は、「ブルネイは建国以来、対外的に主体的な貿易や産業を興したことがない国。その理由として、英国統治下時代に英国人が石油を発掘し、また日本企業の三菱商事(株)が天然ガスを発見したことで、供給を含む権利収入で国の経済が充分成り立ってしまっていること。だから自国で産業や事業、農業すらする必要がない。まさにゼロからのスタートだった」といい、その一方で「自国の産業がないので、海外で高等教育を受けた若者が帰国しても、与える仕事が少なく、若年失業率は約40%に上り、職に就けない若者が増えている」と話す。
その雇用や産業創出に、光触媒による高機能コーティング剤の研究開発が選ばれた理由について、「ブルネイはイスラム教国であり、日々お祈りや断食などで職場から外れることが多いため、製造業よりも研究開発事業の方が向いている。政府からも多くの研究開発の人材をつくり上げてほしいといわれている」と、失業率に歯止めをかけるために雇用創出を期待されていると話した。
今後について同社は食品工場、病院、医療介護施設向けに販路を広げていくほか、カーテン、カーペットに塗布した商品の開発・販売も視野に入れている。またコーティング組成物として、提携する施工会社の(株)ミルテックジャパン(福岡市南区、小橋洋治社長)と共同で特許を出願中で「海外進出も視野にブルネイ政府が米国でも出願している」という。
北村氏は「これまで光触媒を用いた防カビ訴求のコーティング剤は1つもなかったし、市場に出ている防カビ剤は効力期間が短く、また一部商品には、人体に害をおよぼす成分が入っているものもある。NFE2は機能性や安全性も担保されており、まずは日本から広げていきたい」と話し、これまで広がらなかった光触媒市場を新たな産業カテゴリーとして国内外に広げていきたい考えだ。
(了)
【小山 仁】<COMPANY INFORMATION>
代 表:北村 透
所在地:大阪府高石市千代田5-20-16
設 立:2017年7月<プロフィール>
北村 透(きたむら・とおる)
1957年大阪府生まれ。80年大阪大学工学部応用化学科を首席で卒業、82年に同大学修士修了後、大日本インキ化学工業(株)(現・DIC)に入社。フッ素樹脂塗料の開発に従事。退職後、(株)ピアレックス・テクノロジーズを設立。2006年に「フッ素樹脂光触媒の発明」でPlunkett賞、発明大賞受賞。14年にブルネイ政府の支援を受け、防カビ・抗菌対策の高機能コーティング素材「NFE2」を開発。15年にブルネイ大学非常勤教授に就任。17年に「NFE2」の販売事業として(株)ケミカル・テクノロジーを設立。関連キーワード
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