子ども食堂を考える(前)
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大さんのシニアリポート第58回
「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)で、今年二月から月二回「子ども食堂」を開いている。基本「ぐるり」は「シニアのための居場所」となっているものの、周辺(ぐるり)には乳幼児から高齢者まで、幅広い年代層が住んでいる。「異世代間交流」は自然な営みなのだが、高齢者以外の利用はほぼない。今回、市社会福祉協議会が中心となり、「子ども食堂」を開いたのは大いに意義のあることだと思う。一方で、問題点も急浮上してきた。今回は、各地で盛況をみせる「子ども食堂」の実情を紹介する。
わたしが住むこの地区は、県営、市営、雇用促進住宅とUR賃貸の集合住宅群のみで、戸建て住宅は皆無である。近くに県立高校と市立小学校がある。道を挟んで戸建て住宅が広がり、いわゆるニュータウンという名前の高級住宅街だ。しかしそれも昔の話で、最近では空き家が目立つ。更地にした土地に二件の建売住宅をギュウ詰めにして建て、販売。住民の層も変化しつつある。しかし、培われたプライドだけは高い。わたしが住む集合住宅群が小学校区に組み込まれたとき、反対の声が上がったほどだ。小学校で問題が生じると、「県営の子だから」と指をさされた。差別意識は今でも厳然と存在している。子どもを逆さ吊りにしてたばこの火を押ししけた親、子どもに十分な食事を与えない親もいる。ネグレクトもDVもある。公営住宅は収入の上限が決められ、ひとり親で子どもが3人以上など、入居条件も厳しい。つまり経済的に余裕がなく、かつ住宅困窮者で緊急を要する人が優先的に入居する。「貧困」という条件を抱えての入居だから、上記のような問題が起きやすいことも事実だ。
今年2月から本格スタートさせた子ども食堂は、「学校からの要請」というより、社協が中心となり実施。「ぐるり」は常設(年中無休)の施設だから、対応はしやすい。亭主であるわたしの立ち位置は、貸し主。献立や運営方法には基本口を挟まない。「ぐるり」閉亭後の午後4時から仕込みをして、6時に食事。その後、勉強や遊びの時間に振り分けられ、午後8時には終了する。
(つづく)
<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。関連キーワード
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