子ども食堂を考える(後)
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大さんのシニアリポート第58回
「『給食が1日の栄養源』『親が夜も働き、夕食は1人でコンビニ弁当』。『子ども食堂』は、そんな子どもたちに食事を提供する場所だ。(中略)2014年に厚生労働省が発表した国民生活基礎調査のデータは多くの人に衝撃を与えた。国民全体の真ん中の人の所得の半分に満たない人の割合を示す相対的貧困率が日本の子どもは12年に16.3%に達したからだ。ユニセフの同年の報告書によると、日本の子どもの相対的貧困率は先進35カ国中高い方から9番目で、今年4月の発表では、下から10%の子どもと真ん中の子どもの所得格差は先進41カ国中ワースト8位。OECDによると、日本のひとり親世帯の相対的貧困率(09年)は50.8%で加盟34カ国中最悪だ」(「朝日新聞」平成28年5月14日)。子どもの6人に1人が相対的貧困だといわれている。
「子ども食堂」の場所は、公民館や福祉施設などの公的な施設が利用される一方で、寺の本堂や空き店舗などを活用する場合もある。和光市の満願寺住職石井秀和住職は、「『貧困は虐待などに結びつくと聞いていました。地域で何かあったら後悔する。食事を通した居場所作りができれば』と思い立ったという。管理栄養士の資格を持つ知人も参加。スタッフ集めは市のボランティアセンターを頼った。(中略)一方、支援が必要な子どもに届いているのか分からないとの悩みも。市社会福祉協議会が運営する、生活困窮窓口の利用家庭に案内してもらうなど模索する。(中略)民生委員や学校関係者にも協力を仰ぎ、地域との接点づくりも心がける」(「同」平成28年5月31日)などさまざまだ。
問題も多い。「支援を必要とする子どもたちに食堂へ足を運んでもらえるかどうかは、多くの運営者が抱える悩みだ。『貧困』が強調されると、利用者にレッテルが貼られてしまうと心配する声もある」(「同」平成28年5月14日)。食堂利用者が「区別」される恐れがある。「子どもの“孤食”や貧困」を避けるための「子ども食堂」なのに、「手間が省けるから」と街中にある食堂を利用する気持ちで子どもを連れてくる親もいる。「レッテルを貼られないようにするには必要悪」という主催者もいる。
「子ども食堂」は、併行して「親の子どもに対する食育教育」を実践すべきなのだが、これが現実には難しい。地域の学校は親の個人情報の提供を渋る場合も少なくない。家庭の情報を把握している民生委員もまた、開示を拒む。「子ども食堂」を利用すべき親や子どもが確実にいるにもかかわらず、現実的には見えてこない。情報の共有化が進まない。
「ぐるり」では、貧困家庭の子どもたちだけではなく、孤食をせざるを得ない独居高齢者にも声をかけている。もっともこのことが公になると、利用希望者の急増が予測されるため、限定的な運用に止めている。「子ども食堂」の実施には、「貧困などによる“孤食”の回避」という問題だけではない。子どもがいるにもかかわらず、独居を強いられる高齢者もいる。そこに延々と培われてきた「家族の崩壊」という視点も見え隠れしているのだ。
(つづく)
<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。関連キーワード
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