2024年12月23日( 月 )

大名の不動産売却で見えるオンワードの苦境(4)

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(株)オンワードホールディングス

有価証券と土地売却益は自社株購入資金へ

 近年の資産売却政策において土地売却同様に顕著なのが有価証券の売却だ。16年2月期と17年2月期併せて合計128億円の売却益を得た。同社の保有する株式は純投資ではなく、取引先のものがほとんど。主力取引先と友好関係を担保する有効な手立てだったが、近年の株式の流動性を高める政策などもあり各社が解消に向かっている。同社もその流れに沿ったかたちで「脱百貨店という意図ではない」と指摘するが、関係はこれまでと変わってくると見られる。

 こうして得た資金は有利子負債削減に加え自社株購入に投じてきた。同社が63億円を費やして17年2月期に取得した自己株式は800万株。期末の自己株式数は2,160万株で、構成比の12.8%まで買い集めた。今期は300万株(27億円)の自社株買いを計画した。最終的には101万株(約8億2,000万円)で終了したが、自己資本利益率引き上げに向けて2年間で33億円の自己資本圧縮を計画しており、今後も自己株式の購入を継続するのは必至だ。この間現預金は50億円減少したが借入金は244億円削減している。自己資本比率は59.8%となった。M&Aや新規参入など挑戦的な施策の原資は、本業での利益を維持し財務体質を強化したことによるものだ。それでも17年2月期の株価純資産倍率は2年間で0.6~0.7倍に引き上げたもの、1倍まではまだ開きがある。

 不動産売却は継続すると見られるが、同社は「福岡支店は昭和30年代に購入したビル。耐震などの問題も出てきていた。売却は維持費などのコストや売却価格を含めた判断で進めていく」としてやみくもに売却を進めることは否定している。

(つづく)
【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:保元 道宣ほか1名
所在地:東京都中央区日本橋3-10-5
設 立:1947年9月
資本金:300億7,900万円
売上高:(17/2連結)2,449億円

 
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