2024年12月23日( 月 )

北九州市議会に最年少議長誕生 ものづくりの潜在能力を生かすまちづくり(2)

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北九州市議会議長 井上 秀作 氏

 今年2月、北九州市議会議長に47歳の井上秀作氏が就任した。井上氏は東京でサラリーマンを経験し、元北九州市議会議長の父・勝二氏の秘書に就任。以後、市議会議員となって活躍してきた。井上氏は、積極的に北九州市の発展に寄与したいと語る。北九州市のものづくりのポテンシャルを生かした地方創生プランとは何か。井上氏に北九州市発展のための取り組みを聞いた。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

新福岡空港建設反対活動

 ――そういった、既成観念にとらわれない考え方は以前からあったのですか。

 井上 会社勤めのとき「決意を述べろ!」と上司から言われ、「誰が悩むか苦しむか!いつもニコニコ前進あるのみです!」と答えたら上司は黙ってしまいました。良い心がけだ、と(笑)。私はけんかっ早い方なのだと思います。上司であっても、市長であっても、間違ったことを言ったらやっつけてやるというところが大いにありました。かつて、福岡空港を新宮沖につくるという議論が巻き起こりました。私は新空港反対の論陣を張って、がんばりました。テレビにもよく取り上げてもらい、持論を展開したのですが、いい加減にしなさいと先輩議員からお叱りを受けたこともあります。しかし、結果として私がやったことは正しかったと思っています。今、福岡空港、北九州空港が新たなターニングポイントを迎えています。福岡空港が民営化されるときに、北九州空港をどう活用するかがセットで提案されることになると思います。軌道も含めた北九州空港への交通アクセスを改善して、北部九州全体として利便性の高い空港ネットワークが築けるかどうかが、大切な視点になります。

 私の持論ですが、東九州新幹線の最初の停車駅は北九州空港駅にしてもらいたいと考えています。小倉から分岐して、空港に停まり、大分・宮崎へ抜けるルートです。これが実現できれば、博多から23分で北九州空港に行くことができるようになります。これからの空港の発展、北部九州の発展を考えるならば、福岡空港を拡充する視点のほかに、すでにある北九州空港の滑走路をどう活用するかまで含めて考えていかなくてはならないと思いますね。

洋上風力発電の拠点を北九州に

 ――北九州空港の活性化は北九州の活性化につながりますね。

 井上 北九州がより輝くにはどうしたらいいか、ということはいつも考えています。2月の北九州市議選では、私は「北九州に11本の矢を放つ!」と言いました。アベノミクスは3本の矢でしたが、これでは1本外れただけで計画が頓挫してしまうかもしれません。11本放てば、そのうちの5~6本当たれば北九州は復活するのです。その11本の矢のなかの1本目の矢である、洋上風力発電の事業がいよいよスタートします。これは北九州市若松区の響灘に44基、小倉南区の曽根干潟に18基の洋上風力発電機を建設するというものです。試算では、ここで生まれる電力で、北九州市の3分の2の電力を賄うことができます。これから将来にわたって、これまでのように環境を害したり、大きな危険をともなったりする発電方法ではなく、持続可能な方法へと変えていくというのは、大きな変革になると思います。

 ――発電コストを考えるだけではなく、より安全で持続可能な方法へ転換すべき、ということですね。

 井上 再生可能エネルギーへのシフトは重要だと思います。太陽光の普及が進んでいますが、やはり夜間の発電ができないという克服困難な問題があります。風力発電は風況さえよければ24時間発電が可能ですから、そういった面では優れた方法だと思います。しかし、羽が回転するときに生まれる低周波騒音などの問題を内包しているのも事実です。洋上ならば、その問題を解決することができますから、大きなメリットのある第一歩だと思います。ただ、問題はやはり発電コストです。ここは市民の皆さまに理解してもらうことが大切ですね。

 ――大規模な洋上風力発電所が北九州に生まれると、国民の意識も変わるかもしれませんね。

 井上 なぜ北九州市がこの洋上風力発電の実現に一歩先んじることができたのかというと、市が潜在的に持っている技術力の存在なのです。大規模洋上風力発電の候補地には、青森県や秋田県、茨城県も手を挙げていました。しかし、結果として選ばれたのは北九州市です。決定的な理由は、北九州市がものづくりの町だからということです。洋上に発電機を設置すると、設備が海水や潮風に晒されて劣化していきます。つまり、つくって終わり、ではないのです。モーターやベアリング、送電設備などを定期的にメンテナンスしていかなければならないのですが、その技術力を持っている候補地はどこだということになり、北九州市が選ばれたのです。

 北九州市には1901年の八幡製鐵所開所以来、ものづくりの歴史があります。町工場にはさまざまな技術があります。北九州市の技術で新しい仕組みを支えていくこと、それにより地域の経済も厚みを持つことになります。響灘沿岸エリアに風力発電関連技術を集積した、製造・メンテナンスの拠点づくりを目指します。まずは北九州地区の62基ですが、この発電事業が成功したら、全国に波及していくことが考えられます。先ほどの候補地である青森県や秋田県にもつくることになるかもしれませんね。そのときには北九州の響灘から機械や部品を船に乗せて各地に持っていくことになると思います。製造・輸送の拠点となることで雇用・活気が生まれてくる、という新しい流れをつくり出すことが重要です。

(つづく)
【文・構成:柳 茂嘉】

<プロフィール>
井上 秀作(いのうえ・しゅうさく)
1969年4月、北九州市小倉北区生まれ。駒沢大学法学部政治学科を卒業後、国際航業(株)に入社。95年、井上勝二北九州市議会議長秘書に就任。2002年2月、北九州市議初当選、以後5期連続当選を果たし、17年2月に北九州市議会議長に就任。趣味は音楽・映画鑑賞、釣りなど。

 
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