野外映画祭の電力を、水素燃料電池車・プラグインハイブリッド車で
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9月23日、糸島市・志摩中央公園で開かれた、2回目を迎えた野外映画祭「いとシネマ」。今回は「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2017 in 福岡」として開催された。この映画祭のスクリーンは、電動ファンで空気を送り込むエアー式だ。その電動ファンや会場の音響、照明などすべての電力を、「自動車」でまかなうという画期的な取り組みが行われた。
水素燃料電池車(FCV)、いわゆる水素自動車。水素を燃料とし、外部に排出するのは水だけという究極のエコカーだ。現在、日本では約1,500台の水素自動車が登録されているが、自動車全体の保有台数(約8,100万台)と比べれば、まだまだ普及しているとはいいがたい。
しかし水素自動車には、従来のガソリンエンジン車とは大きく異なる特徴がある。それは、水素自動車自体が高効率な大型発電機のようなものだということだ。
今回「いとシネマ」に参加した水素自動車は、トヨタ「MIRAI」とホンダ「クラリティ FUEL CELL」。どちらも日本の水素自動車の草分け的存在だが、今回はまったく違った電力供給のスタイルを披露してくれた。
MIRAIの特徴は「手軽さ」。キャビン内のカバーを開けると、100Vのコンセントが顔を出す。ここにプラグを挿入すれば、家庭とまったく変わらない状態で電力を使うことができる。
対してクラリティは、「大容量・大出力」が特色。外部に給電機を接続することで、定格9kVAの電力を7日間供給することができるのだ。給電機には100V6口、200V1口の出力端子が備え付けられており、複数の電化製品を同時に使用することができる。水素を満タンにしたクラリティからは、一般家庭7日分の電力を取り出すことができるのだ。また、今回のデモンストレーションにはトヨタカローラ福岡からプリウスPHEV(プラグインハイブリッド自動車)も参加した。
デモンストレーションを行った九州大学水素エネルギー国際研究センターの藤田美紀さんは、「屋外イベントで通常使われる、石油を使った発電機特有の臭いや音、振動は一切ありません。クリーンで、静か。これがFCVの特徴です」と語ってくれた。災害時の避難所や仮設住宅でも、この静音性と高い給電性能は非常に有意義だといえる。
水素自動車の本格的な普及には、水素を供給する水素ステーションが増えることがカギとなる。通常のガソリンスタンドと異なり、数億円の費用が必要となるため、一足飛びに数を増やすことは難しい。しかし政府のガイドラインによれば、2020年の東京オリンピックまでに水素自動車4万台・水素ステーション160カ所が目標とされている。はたして未来の自動車・FCVの普及は、どれだけ進んでいくのだろうか。
【深水 央】
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