シリーズ　部下の目から見た高塚猛（３）～島津三郎氏・星期菜（株）取締役

星期菜（株） 島津 三郎 取締役

「高塚さんは気配りの天才。ああいう方はもう出ないのでは」

　そうこうしているうちに、福岡ダイエーホークスの優勝（1999年）が見えてきました。パ・リーグで優勝して日本シリーズに進むと、テレビ放映があります。その年は福岡で4戦、敵地の名古屋で3戦するので、最大4つの放送局で中継の権利を得ることができるようになりました。

星期菜（株） 島津 三郎 取締役

　当時、（株）ホークスタウン（ホテル、ドーム、球団の3点セット）の営業本部長、安田さんから突然「島津さん、明日年間予約席の営業に同行してもらえませんか？」と言われました。どこへ行かれるのかと思ったら、福岡の某放送局でした。リーグ優勝を踏まえて、年間予約席購入などの協力依頼営業に同行したのです。「優勝が見えてきました。地域一体となって優勝を勝ち取りたいので御社のご協力をよろしくお願い致します」という戦略です。放送局にしてみると、これまで優勝したことのないダイエーホークスの日本シリーズ放映権は喉から手が出るほど欲しい。「了解しました。できる限りの協力をさせていただきます」と快諾を得ることができました。結果的に、思いがけないほどのご協力（来期の年間予約席購入）をいただいたことで、自然と笑みがこぼれました。その後もいくつかの放送局の営業に同行させてもらい、目標達成の大きな原動力になりました。この放送局への営業は、実は私の担当ではなかったのです。安田さん一人でできる営業なのに、なぜ私が同行させてもらえたのか？どうやら高塚さんの指示だったようです。私は年間予約席販売のリーダーですから、部下の手前誰よりも数字を上げないと格好がつかない。そのへんを察して高塚さんが、私には何も言わずに「島津を連れて行ってくれ」と安田さんに指示されたのだと推測します。高塚さんという方は、そうした天才的ともいえる位の、細かい気配りが平気でできる繊細な方でした。

　ダイエーホークスが優勝したその年、私が率いた年間予約席販売チームは目標の5億を大きく上回る実績を残したうえで、最初に言われた通りに短期間で解散しました。でも、その時に各営業マンが頑張った実績は残りました。たとえば某レストランの課長が20口売ったとすると、その販売先と一番人間関係が深い担当者はその課長ですから、翌年の契約更新についてはその人が担当する事が一番スムーズに運びます。その販売先はおのずとその課長の「エリア」になるので、”やったらうれしい仕事”が自然に広がります。誰に命令されたわけでもないのに、「来年はもっと増やそう」という意識が芽生えてきます。こんな素晴らしい仕組みをよく考えつかれたものだと感心しました。それからは、年間予約席は社員全員で売るのが当たり前になり、頑張ったスタッフにはそれなりのご褒美も貰えました。ほかにも、部門・部署間の垣根をなくして結果的に人件費改善を達成するなど、「高塚マジック」は続いていきます。

（つづく）
【NetIB-News編集部】

＜プロフィール＞
1949年生まれ、福岡市中央区出身。西南学院高校卒業後、東京ＹＭＣＡ国際ホテル専門学校を経てホテルオークラ東京へ入社。1970年代に九州初のフレンチレストラン「花の木」を立ち上げ。その後、複数の飲食店支配人を経て、1995年にシーホークホテルアンドリゾート入社（中華料理「龍殿」開業準備室支配人）。料飲部長、取締役総支配人を歴任して退職後、「ブッチャー警固」を開業。現在は「天職」と語るギャルソンとして中華料理「星期菜」に立つ。
●星期菜
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