社員よりも自分のカネが大事 家業を食い潰した本村会頭(前)
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創業64年を迎える酒類卸の老舗・(株)本村商店。筑邦銀行の管理下にあった同社は今年8月1日、大手の(株)イズミック(本社:愛知県名古屋市、盛田宏社長)へ事業譲渡し、(株)本村イズミックが設立された。本村商店は、久留米商工会議所・本村康人会頭が社長を務めていた出身企業。ところが、経営環境が悪化し、業績が低迷するなか、悪戦苦闘する社員をしり目に、本村氏は保身に専念していたという。
社外活動に熱心で本業が疎かに
(株)本村商店の社長だった本村康人氏は、若いころから青年会議所(JC)、商工会議所といった活動を熱心に行っていたとされる。JC活動に熱心で本業を疎かにして会社を潰した経営者は少なくはないが、本村氏はまさにその典型だ。
酒類卸業者といえば、かつては酒類メーカーが卸としか契約を結ばない時代があった。そのため酒販店やスーパーなどの小売店は酒類卸を通さなければ物を仕入れることができず、“殿様商売”とされていた時期もあった。しかし、若者のアルコール離れなどの理由で国内の酒類消費量が減少傾向をたどり、業界全体が新たな動きを求められてきた。旧態依然とした企業は淘汰されるなか、福岡県内でも倒産する酒類卸は少なくなく、福岡酒類販売(株)(福岡市、2012年3月倒産)、(有)大津屋(嘉穂郡桂川町、14年6月倒産)といった地域の有力卸が時代の変化に対応できずに倒産した。
本村商店には、役員や社員らが英知を結集し、会社を守るために試行錯誤していた様子がうかがえる。久留米市内の飲食店などに話を聞くと、本村商店の役員や社員との信頼関係の厚さを感じた。会社を守るために必死に活動していたことを語る人は多い。なぜ、銀行管理下となり、事業譲渡しなければならなかったのか。それもこれも当時のトップである本村氏が社業を放棄して、夜のクラブ活動に専念していたからにほかならない。
借金3,000万円を会社が肩代わり
04年ごろの話であるが、当時、本村商店は黒字経営だったという。だが、利益確保が難しくなっていたことから、メインバンクの筑邦銀行が財務を分析し、以下の2つの提案を行った。(1)役員が会社から借りている仮払いを全額返済する。(2)全社員のボーナスを暫定的に休止する。
当時、仮払いを受けていたのは社長の本村氏と常務の2人。本村氏が3,000万円、常務が500万円を借りていた。筑邦銀行の提案を受けて、常務は500万円を全額入金したが、本村氏は「俺はこんな金は借りていない」と言って抵抗。「数年前に亡くなっていた父親が借りた金だ。何で俺が返さなくちゃならんのか!」と駄々をこねたという。
最終的に3,000万円を筑邦銀行から借り入れて、会社に全額入金。だが、同時に本村氏の妻を役員とし、毎月銀行へ30万円返済する一方で、妻が給与30万円を受け取るといった行動に出た。つまり、間接的に会社が肩代わりをするかたちになっていたのだ。
(2)のボーナスを暫定的にストップさせることについて会社側は受け入れ、社員にも説明し、理解を得たようだが、実のところ、本村氏のボーナスだけは陰で払い出しされており、220万円を年2回、計6年間受領する状態が続いていたようだ。会社が厳しい時でも自分の利益はしっかりと確保する。社員に冷や飯を食わせながら、自分は裏でステーキを食べるといった愚行に出ていた。この事実を知る社員が居たかどうかはわからないが、まじめに働く社員に対する冒涜であるといえる。
(つづく)
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