2024年11月24日( 日 )

プレイボーイ創業者ヒュー・ヘフナーを偲ぶ(3)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

「ポルノ王」ならぬ、ヘフナー真の姿

 そして私は、ニューヨークからニュージャージーのグレートゴージを経て、アメリカ各地のプレイボーイの関連施設を訪ねることができた。そこには日本で想像していたのとは全く異なる世界が広がっていた。数多くの美女と出会い、ゴージャスなひと時を楽しむ、なんて世界も体験できるのか、などと想像していたが、ヘフナーのプレイボーイ哲学とビジネスセンスは大違いだった。

 最初に訪ねたグレートゴージのプレイボーイ・リゾートにしても、会社の研修にも活用される会議やスポーツ施設を完備。利用客の大半は家族連れであった。家族や仲間を大切にするヘフナーの気持ちやライフスタイルに触れることができ、その後の筆者の人生は大きな影響を受けた。リゾートホテル内で出される食事は、緊張していたせいかその味を十分に堪能できなかった。

プレイボーイ・マンション

プレイボーイ・マンション

 しかし、音楽やダンスを楽しみながらの夕食は別世界の出来事のようだった。いわゆるバニーガールと呼ばれる女性たちは別棟の寄宿舎で共同生活を送っているとの説明だったが、皆、接客マナーを徹底的に教育されているようで、メニューの説明から給仕に至るまで、実に優雅な物腰に驚かされた記憶がある。

 とにかく、グレートゴージで一番印象強く残っているのは、ペントハウスのステンドグラスだった。教会などでお目にかかるものと違い、周囲の壁一面に輝いていたのは巨大なプレイメイトの立ち姿。当然、皆オールヌードである。太陽の光を受け、全裸の美女がほほ笑むステンドグラスには驚かされた。ヘフナーの女性に対する見方は女神を慈しむかのようだった。けっして、即物的な対象として女性を利用していたのではないことは確かだ。

プレイボーイ・クラブは女性が夢をかなえる場所

 その後、各地のプレイボーイ・クラブで出会ったバニーガールたちと話をしてみたが、その多くは自分の夢を実現するための資金を貯める目的で仕事に励んでいるようだった。当時は女性の社会進出も限られており、ヘフナーの元で働くことに生きがいを感じる女性が多かったのではないか。もちろん、時給も断トツで、数年で大学の学費を賄うことができたという。実際、バニーガールを卒業し、専門職の道を歩み、成功した女性は多い。

 筆者が後に8年ほど暮らすことになった首都のワシントンにある国立衛生研究所(NIH)の細菌研究部門の責任者も若いころはバニーガールだった。実は、プレイボーイ・クラブのバニーガールには特徴がある。お客にメニューを提示したり、飲み物や食事を給仕したりする際の身のこなし方、特に膝の曲げ方や上半身の傾き加減にヘフナー直伝のこだわりがあった。
 さらには歩き方にも独特の見せ方があった。そのため、一度こうした姿勢を身に着けると、プレイボーイ・クラブを卒業しても、そうでない女性との違いが際立つ。日本ではバニーガールのセクシーな衣装に関心が集中しがちだったが、ヘフナーの狙いは立ち居振る舞いの中に「プレイボーイ風」を植え付けようしたのである。残念ながら、そんなヘフナーの真意を理解する人は少なかった。この度のヘフナーの訃報に接し、改めて彼の果たした役割、あるいは演じたプレイボーイ文化の意味を振り返ってみたい。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
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