2024年12月21日( 土 )

【2017衆院選・福岡】「排除」が分けた明と暗 緒方林太郎氏と山内康一氏(後)

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 その後の希望の党の失速と立憲民主党の旗揚げ、そこに吹いた「風」については他の稿に譲るが、福岡でその「立憲民主の風」をもっとも効率よくとらえたのが山内康一氏だった。一方、その機を失ったのが山本剛正氏、逆に希望の党に吹き付けた逆風をまともに食らったのが緒方林太郎氏となるだろうか。そもそも山内氏は立憲民主党の枝野幸男代表とつながりがあり、希望の党との合流話が浮上したころから、頻繁に枝野氏と連絡を取り合っていた。そこで生まれた時間的余裕が、共産党との候補者調整を可能にし、野党一本化を果たして自民・古賀篤氏との一騎打ちに持ち込むことができた。立憲民主党への鞍替えが一歩も二歩も遅れた山本氏はこの調整をつけることができず、結局福岡1区は自民現職vs希望vs共産vs立憲民主、という乱戦の構図のなかで沈むことになった。

緒方 林太郎 氏

 それ以上に厳しい事態に直面したのが、福岡9区で選挙戦を戦った緒方林太郎氏である。選挙戦終盤、緒方陣営のスタッフは取材に応じ「小池氏の効果はあると思うが、どこまで票に影響するかはつかみ切れていない。いい方にも悪い方にも影響はあると思う。希望の党所属ということもどこまで前に出すべきか、長い間迷っていた。希望の党のポスターを事務所前に掲示したところ、数件ではあるが、希望の党に所属していることに対してクレームがきた」と述べ、想定以上の逆風に焦りを露わにしていた。
 結果、緒方氏は7万8,833票を獲得して2位となり、議席を失った。小選挙区で当選した三原朝彦氏の9万1,329票とは1万2,000票あまりの差がついた。3位の共産党・真島省三氏は2万9,635票を獲得しており、仮に民進党のまま、もしくは立憲民主に転じて共産党との一本化に成功していれば、単純な足し算では自民・三原氏を上回っていたことになる。民主党政権時代は「仕分け人」を務め、福岡県選出の民進党議員のなかでは知名度も高かった緒方氏だが、比例復活にも届かないという結果に終わった(惜敗率では5位。希望の党は比例で4議席を獲得したが、名簿掲載順単独1位の中山成彬氏を除くと、比例復活できたのは3名のみだった)。

 「排除」の知らせを伝えた者、伝えられた者。その明暗が分かれる選挙となった。
 風に乗って議席をつかんだ山内氏の真価が問われるのは、これから召集される国会の場である。

(了)
【深水 央】

 
(前)

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