2024年12月23日( 月 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~「打高投低」今年の甲子園を振り返る(前)

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 今年の夏の甲子園大会の予選時から「打つ」ことが取り上げられる事が多く、どの地方大会も本塁打競争をしているように煽り立てているような記事が大きく見られたような印象を受けたのですが、皆さんの印象はいかがでしょうか?私は、これは多分に早稲田の清宮くんの影響が大きかったのかな?と思います。

 事実99回大会の甲子園大会では今までにないほど本塁打が飛び出し、総本塁打数は68本になり、今までの記録である60本を軽く超えてしまいました。一人で2本以上記録した選手も13人、凄い数字です。広陵高校の中村くんは清原選手の大会記録の5本を上回る6本の新記録を達成しました。1大会で、一人で6本です。金属バットになったから、食育、筋力トレーニングが進んだこともありますが、あまりにも多すぎます。このような事が進んでゆくと野球が荒っぽくなっていくばかりで、本塁打が好きな私でも首をかしげる現象です。これでは高校野球本来の緊迫感、緊張感あふれた試合は無くなってしまうのではないかと心配してしまいます。

 準々決勝の各試合の得点を見てみると、花咲徳栄vs盛岡大付属10-1、広陵vs仙台育英10-4。後の2試合も9-1、13-9という数字で打撃戦ばかりが目立ちます。準決勝は花咲と東海大菅生が12-9、広陵9点、天理が6点、そして決勝戦が14対4という数字では我々の時代の決勝戦と全く違う試合の印象が強いと思います。これだけの得点を記録するにはバットから鋭い打球が全てというわけにいかないでしょう。ここには四死球があり、エラーがあり、目に見えないミスがいっぱい含まれているという事が考えられます。

 打つことよりも時間をかけて練習しなくてはいけないのが、送球のミスをしない、打球を正しく追いかける、慌てないで正確にボールを捕球するという守備の基本。人間は緊張すればするほどミスを犯します、特に甲子園という最高の場所に来て緊張しないほうが不思議です。そんななか練習して来たプレーを普通に出すことができるようにするには、いかに時間をかけてグランドで練習してくるかにかかっていると思います。

 今年の甲子園大会では48試合が行われました。この中で3点以内の試合が僅かに6試合、この数字では寂しいと思います。いかに普段の練習で守りを大事に練習して来たか?投手を中心に練習を積み重ねて来たか?疑われます。

 大阪桐蔭2-1智弁和歌山、仙台育英2-1大阪桐蔭、仙台育英1-0日本文理、神村学園3-2京都成章、天理2-1神戸国際大、前橋育英3-1明徳義塾。

 1点を守りながらイニングを進む苦しさ、大変さがチームを鍛えてれ、選手を育ててくれることがあります。

 野球というゲームはいろいろな場面で選手たちを鍛えてくれるのです。

(つづく)

2017年10月25日
衣笠 祥雄

 
(後)

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