2024年11月23日( 土 )

産廃処分場を巡る裁判で見えてきた壮絶な騙し合い(5)

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 福岡市博多区金隈にある産廃処分場運営の(株)和幸商会(本社:福岡市博多区、箭内伊和男代表)で起こったサニックス創業メンバー箭内氏による会社の「乗っ取り」は既報の通りだ。取材の過程で判明していたのは、同処分場の不可解な不動産取引だった。そして、今回、同不動産をめぐる裁判を通じて、処分場売却の真相が見えてきた。

 問題なのは、株主の承諾を得て、売却されたのか、どうかである。複数の株主に和幸商会の株式売却について、尋ねたが、皆「聞いていない。売却の承諾をした覚えもない」「自分がまだ株を持っているはず」と回答した。

 つまり、箭内氏は株主の知らないところで、勝手に株式を売却。そして、現金を「元」株主に渡すことなく、会社もしくは個人に入れていることになる。他人の物を、何の承諾を得ずに、売却したとなれば、言うまでもなくそれは犯罪行為に当たる。

破綻を招いた三人の強欲

 ここまでくればわかるように、和幸商会の取締役会は機能していない。役員組織もまるででたらめだ。登記上、今年7月に監査役が辞任していることになっているが、その監査役本人は自身の辞任の事実を知らなかった。筆者の指摘で初めて「自分が登記上、辞任したことになっている」ことに気付いたのである。それでも「箭内氏なら、やりかねない」と関係者はそれほど驚いた様子はなかった。今後、いずれも「株主権確認訴訟」「地位確認訴訟」などに発展していく様相だ。

 産廃処分場をめぐる登場人物の思惑は三者三様だ。しかし共通するのは、壮絶な騙し合いも辞さない我欲の強さである。処分場を売りつけるために大口を叩き、承諾を得ずに株を売り払った箭内氏。共同経営としながらも、独り占めしたかったY氏。Y氏から移させた土地の所有権を盾に、金銭を要求したU嶋氏。

 原告の突然の請求取り下げにより、全貌はまだ詳らかになっていないが、戦況的には引き分けと言えるだろうか。しかし、三者間の信頼関係は失われてしまっている。このような状況で、まともな産廃処分場の運営ができるとは思えない。経営再建のために、最初から協力してやっていれば、少ないながらも全員が利益を手にできたのではないか。そう思えてならない。

(了)
【東城 洋平】

▼関連リンク
・会社を乗っ取った元サニックス創業メンバー(前)~頓挫した廃プラ事業

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