福岡市立A中学校、異常に難しい定期テストの裏事情~矛盾する教育委員会の見解(中)
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匿名を条件に話を聞いた、福岡市立中に勤務する教師は、「公立中学校の定期テストとは本来、一般的能力の子どもが自宅学習を地道に続けて努力すれば、最低でも7割以上得点できるような内容・難易度にすべきです。『こつこつ地道な努力が大事』と、大人は簡単に言いますが、実際にそれができる子は少ない。だからこそ、努力をきちんと評価してあげるべきなのです」と語る。
A中で実施された数学のテスト問題を見せると、「『やればできる』『できた』という成功体験こそ、心身ともに伸び盛りの子どもたちにとって必要です。A中のテスト内容はちょっとやりすぎな印象を受けます……。正直、うちの生徒ならまったく太刀打ちできないでしょうね(笑)」と、複雑な表情を見せる。記者は、A中学校のテストと同じ時期に別のB公立中学校で実施されたテストも入手したが、数学から遠ざかって数十年の記者の目にも、明らかに難易度が違うのがわかる。なぜなら、B中学校の問題はある程度の手ごたえをもって解くことができるのだ。A中学校の問題の前では頭を抱えるしかなかったのだが。
定期テストの結果は通知表の評定に大きく影響する。それにも関わらずここまで違う難易度のテストが、同じ市内の公立中学校で実施されていることに問題はないのか。たとえば、簡単なテスト内容の中学校に入れば80点とれていたであろう子どもが、A中学校に入学したために50点しか得点できないとすれば、はたしてその子は公平・公正な評価を受けるのであろうか(もちろん逆もしかり)。また、「評定はテストの結果だけで決まらない」という建前もあるが、それならば公平性が保たれないテストを行う意味があるのだろうか。生徒の一生を左右しかねない高校入試にも直結する問題だが、福岡市の見解は「問題なし」だ。
福岡市教育委員会と福岡市教育センターの担当課長によると、学年や進度ごとに定期テストの統一出題基準を設けたり、作問にあたって留意事項を通達するなどの措置は講じておらず、テスト作成についてのいっさいの権限を各学校長に委ねているという。さらに、各中学校でどんな内容のテストが行われているのか報告も受けていない。したがって市立中学校でどのような内容のテストが行われているかまったく把握していないのが実情だ。
市教育センターは、「学校長は長い教職員歴があるので」不適切な内容のテストにならない、としており、定期テストの内容が適切かどうかを「学校長の見識と教員歴」という人的要素で担保しているかたちだ。また、学校間でテストの難易度に差が生まれていることについては、「ありうるだろう」(市教育センター)と認める一方で、「(市内公立中の定期テストは)校長の権限のもと、問題なく実施されている」(同)とも断言する。しかし、テスト内容を把握も調査もしていないにもかかわらず、なぜ「テストは問題なく実施されている」と言い切れるのか。矛盾を突くと、市教育センターの担当課長は「これ以上は話せない。文書で情報公開請求をしてほしい」と言い捨て、逃げるように電話を切った。
(つづく)
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