2024年11月23日( 土 )

丸源の栄枯盛衰~不動産王の軌跡(2)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 東京・福岡の繁華街の不動産を次々と取得し、「源」の文字を丸で囲った看板をつけていった川本氏。不動産王としての名をほしいままにしていった。それだけならば称賛されることはあっても批判を受けることもなかっただろう。しかし、川本氏には独特のポリシーがあった。節税である。それも半端ではない節税だ。かつて、川本氏は「節税はゲーム。無駄な税金を払う必要はない」とうそぶき、事実、社名や本店登記の頻繁な変更、会社の清算・復活を繰り返すなどの裏技を駆使して東京国税局との間で法人税をめぐる争いをし続けてきた。しかし、13年3月、ついに年貢の納め時がやってくる。東京地検特捜部が法人税法違反で川本氏を逮捕したのである。

 逮捕容疑は12年4月に清算された東京商事(株)で、所有するビルに入居する飲食店の賃料収入を除外したり、ビルのありもしない売却損を計上したりするなどして11年12月期までの3年間に約28億8,400万円の所得を隠し、約8億6,200万円を脱税した疑い。13年6月には初公判が東京地裁で開かれた。新聞各社の報道によると川本氏は初公判の後、「全部でたらめ」と起訴内容を否認した。節税はしたが、脱税はしたことがない、という主張だ。税を節約するためにさまざまな方法をとってきた川本氏のポリシーと国税局が全面的に争うことになったのである。

 丸源ビルの設備の脆弱性が事態をさらに悪化させる。14年12月、今度は北九州市消防局が丸源(株)及び同社代表の川本氏を福岡県警小倉北署に訴える事態となったのだ。消防法で定められた防火戸の改修を怠ったなどによる告発だ。12年5~6月に同消防局が実施した防火設備の立ち入り検査で火災報知機が作動しない、防火扉が作動しないなどの不具合が発覚し回収するよう指導していたが改善されなかったために小倉北署に告発することとなったのである。なお、福岡地検は16年7月、「違反が解消され再犯の恐れがないことを考慮」して、不起訴としている。

 世界な名を馳せた富豪が逮捕される事態に陥ったことは多くの人を驚かせることとなった。そして、ここから丸源ビルの売却が始まっていく。

(つづく)
【特別取材班】

 
(1)
(3)

関連キーワード

関連記事