アンチエイジングの切り札、脂肪由来幹細胞とは(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
人間は衣食住が足りてくると、美と健康に強い関心をもつようになるようだ。とくに現在のように世界的に高齢化が進んでくると、そのなかでもアンチエイジングへの関心が焦眉の急となるは当然の結果かもしれない。化粧品会社や美容成形外科を始め、いろいろな業界がアンチエイジングという新市場に食指を動かしている。
日本では最近再生医療という言葉を頻繁に聞くようになっているが、再生医療の実現が今そこにきていることを筆者はひしひしと感じている。まだ臨床試験の段階で、安全性などについてさらなる研究が進められているが、今の段階でもその大きな可能性に期待が寄せられている。今回は再生医療の1つである幹細胞について最近の動向などを紹介しよう。
幹細胞という言葉には、すでに聞き覚えのある方が多いだろう。幹細胞という言葉は、ドイツの生物学者であり、哲学者であったエルンスト・ヘッケルが初めて使ったとされている。ご存知のように私たちの体は数十兆個の細胞で構成されている。細胞はそれぞれ役割をもっている。この細胞のスタートは1個の受精卵からだが、その1個の細胞が何回も分裂を繰り返し、数十兆個に増えたわけだ。ところが、細胞には細胞ごとに役割があるが、役割を持たず、どのような細胞にもなれる細胞がある。それが幹細胞だ。幹細胞はこのようにいろいろな細胞になれる能力だけでなく、自分と同じ細胞をコピーする能力を持っている細胞を指す。
さて、幹細胞は大きく3つに分けることができる。ES細胞(胚性幹細胞:Embryonic Stem Cell)、骨髄細胞のように成人の体細胞に少量が存在する成体幹細胞、最後に人間の体細胞を人工的に再プログラミングして作ったiPS細胞である。
ES細胞は他人の受精卵から作られた細胞であるだけでなく、生命の源であるといえる胚を壊してしまうという倫理的な問題を抱えている。そのような問題を克服したのがiPS細胞で、それを作ることに成功した山中教授はノーベル賞を受賞するに至っている。より安全で高品質なiPS細胞を作るため、世界的に研究が進められている。
幹細胞のなかでも、成体幹細胞は、人体のいろいろなところに微量に存在し、人体の正常な状態を維持できるように、常に細胞を供給する役割を担っている。ES細胞と違って安定的に分化するのでがん細胞になる可能性も低く、その上、他の幹細胞に比べて、分離、抽出も容易であるため、細胞治療薬としては一番可能性が大きい。骨髄細胞を利用した心筋疾患などに効果のある治療薬は、すでに韓国では政府の承認を得ている。
(つづく)
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